“期待の前借り”で株高発生。それを不安視した金高発生の可能性も
以下は、世界の金価格の指標であるドル建て金価格の推移です。足元、2020年8月7日につけた史上最高値を目指すように反発しています。
図:ドル建て金相場の推移 単位:ドル/トロイオンス
次のレポート「ハリケーン「ローラ」襲来でコモディティ価格に影響!【ジャンル横断・騰落率ランキング】」でも書いたとおり、先週は、金価格が上昇しましたが、米国の主要株価指数も上昇しました。つまり、“株高・金高”だったわけです。FRBの“ゼロ金利延長宣言”が、以下の経路で“株高・金高”の要因となったと見られます。
図:“株高・金高”が起きるしくみ
先述のとおり、“ゼロ金利延長”は、個人や企業の資金調達を有利にするため景気回復期待が高まり、株高が起こり得ます。同時に、米ドルに対する相対的な保有妙味増加から代替通貨需要が高まり、金高が起こり得ます。
また、新型コロナ・ショック(新型コロナのパンデミック化を受け、2月下旬から3月中旬にかけて発生した幅広い資産の価格急落)の後、米国で大規模な金融緩和(FRBによる資産買い取り)が始まったことをきっかけに、6月上旬まで、“株高・金高”が起こりました。
資産の買い取りの開始をきっかけに、景気回復期待による株高と、代替通貨需要増加にともなう金高が起こりました。資産の買い取りもまた、ゼロ金利維持と同じ金融緩和策の一つで、現在も継続中です。
新型コロナ・ショック後、6月上旬までの株高について、“実態を反映していない可能性がある”との指摘が相次ぎました。経済指標が悪化しているにも関わらず、株価が上昇していたためです。それについて、株式市場もその自覚があったと見られ、“半年や1年後の期待を今、織り込んでいる”、との説明がなされました。
つまり“期待を前借り”することで、足元の景気が悪くても、株価は上昇する場合があるわけです。その株価の上昇とともに金価格も上昇しましたが、その時の金価格の上昇の一因になったのが、“株価が実態を反映していない可能性があることへの不安による、代替資産需要増加”だと、筆者は考えています。
今後、ゼロ金利が維持された環境の中、景気回復期待・代替通貨需要増加で、“株高・金高”が起こる可能性があります。そして、期待を前借りし、経済指標がおぼつかない中で株高が継続した場合、代替資産の面からも、金が買われる可能性があります。