大型ハリケーンによる供給障害懸念が需給引き締め観測を強める

 原油市場における上昇要因の1つとした、米国における「ハリケーンシーズン」に関りがある場所は、米国南部のメキシコ湾岸地区です。以下は、主要地区ごとの原油の生産シェアを示しています。

図:米国内の主要地区ごとの原油生産シェア (2018年5月)

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

 全米に占めるメキシコ湾の原油生産シェアは、14.4%で2位です。この地区を大型ハリケーンが直撃すると、原油生産量が一時的に急減することがあります。2000年以降で2度、メキシコ湾で、ハリケーンが直撃したことで、大規模な生産減少が起きました。

 以下は、2005年9月のハリケーン「カトリーナ」と「リタ」、2008年9月の「グスタフ」が、ハリケーンとしての勢力を維持したまま通過した経路です。

図:3つの超大型ハリケーンの経路

出所:EIA(米エネルギー省)のデータ、NHC(国立ハリケーンセンター)の資料をもとに筆者作成

 以下のグラフは、2005年9月と2008年9月のメキシコ湾の原油生産量を示しています。一時的に、原油生産量が急減していることがわかります。復旧まで数カ月を要しました。

図:メキシコ湾の原油生産量

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

 先週メキシコ湾に襲来したハリケーン「ローラ」の影響で、一時的に原油生産量は減少したと報じられましたが、週末から順次、作業員たちが作業場に戻り始めていると報じられており、大規模な生産減少にはいたらなかったと見られます。先週の原油生産量などの具体的な数字は、今週水曜日に公表されます。目下、米国はハリケーンシーズンにあり、供給減少が起きる可能性があります。

 新型コロナの影響で、石油製品の需要が減少しているものの、一時的にせよ、供給が減少すれば、需給のゆるみは緩和される可能性が生じます。