原油相場、全体的には材料は強弱拮抗

 以下は、世界の原油価格の指標の1つである、WTI原油先物の価格推移です。6月上旬以降、ほとんど横ばいで推移しています。また、本日(2020年8月31日)に、ダウ30種工業株価指数から除外されることとなった、エクソンモービル社の株価も、原油価格と同様、1月から下落し、新型コロナ・ショックで下落が加速し、4月ごろからやや持ち直すも、ほぼ横ばいです。

図:WTI原油価格とエクソンモービルの株価の推移 単位:ドル/バレル

出所:ブルームバーグより筆者作成

 新型コロナの感染拡大で、世界的に“新しい生活様式”が広がっています。新しい生活様式の拡大と、それまであった世界共通の問題解決への動きが相まって、温暖化の主因とされる化石燃料を用いない手法によるエネルギー調達を目指す動きが目立ち始めています。

 特に欧州では、e-Fuel(水素と二酸化炭素の合成液体燃料)の開発、発電を含めた社会全体で脱炭素を達成しようとする動きが出始めています。二酸化炭素を排出しないことを是とする考え方と、社会から無駄を省いたり、効率化を進めたりする“新しい生活様式”の考え方が、マッチしているとみられます。コロナ禍が、脱炭素の動きを加速させる一因になっていると言えます。

 環境を守る動きが世界各地で目立ち始めている中で、化石燃料を生産したり、消費したりすることは、社会が是としない行為とみなされる可能性が高まりつつあると言え、エクソンモービルのダウ採用銘柄の除外は、コロナ禍を含んだ世界全体の、温暖化に関わるムードが変わりつつあることが後押しした可能性があると、筆者は考えています。

 以下の通り、米国のパリ協定復帰の可能性を含め、原油相場の材料をまとめてみました。

図:原油相場の足元の変動要因

出所:筆者作成

 原油相場に上昇要因がないわけではありません。しかし、同時に下落要因が存在しています。上昇要因と下落要因が相殺し合い、その結果、価格が横ばいになっている、と筆者は考えています。

 OPECプラス(石油輸出国機構=OPECと、非加盟国で構成される組織)の件で言えば、今年4月の会合で、原則、2022年4月まで減産を継続することを合意しているため、大きな例外が発生しない限り、すぐに減産が終わることはありません。また、5月・6月・7月に、減産を順守できなかった国は、順守できなかった分を、8月と9月に、多めに削減することになっています。これらは、OPECプラス起因の上昇要因と言えます。

 また、世界の石油事情における上昇要因に挙げた米国の「ハリケーンシーズン」について、先週米国のメキシコ湾岸にハリケーンが襲来するなど、季節的に、米国の原油生産量や石油製品の生産量が減少する機会が生じやすくなっています。