毎週金曜日夕方掲載
本レポートに掲載した銘柄:任天堂(7974)、ソニー(6758)
1.新型コロナウイルス感染症の影響は長期化するか
今回は巣ごもり消費と家庭用ゲームについてレポートします。銘柄は任天堂とソニーです。
まず、新型コロナウイルス禍が長期化するかどうかを考えてみたいと思います。結論を先に言えば、現在開発中のワクチンが大成功すれば別ですが、そうでない場合は、年内には終息せずに来年も大きな影響が続く可能性が高いと思われます。終息には短い場合で2~3年、5年以上かかる場合もあり得ると思われます。
このように考える理由は次の通りです。
1)治療法が確立されておらず、特効薬がない
医療現場の努力で治療法は洗練されてきたとは思われますが、完全に確立されたわけではないと思われます。治療薬も既存薬の転用について臨床試験を行っているところであり、新規の開発も含めて時間がかかりそうです。
2)ワクチンが完成しても、大勢の人に対して効果があるとは限らない
現在開発中のワクチンの中では、米モデルナと米ファイザーが開発中のワクチンが有望と言われています。いずれもフェーズ3の段階であり、3万人規模の治験を行いますが、臨床試験が成功して上市した後、実際に患者に打つ場合、数百万人から数千万人、いずれは数億人規模に投与することになります。その場合、臨床試験とは違う結果、効き方が鈍い、未知の副作用が出たなどの異常が発生する可能性は否定できません。一般論で言えば、新薬の場合、上市して1~2年で副作用がほぼ出尽くしますが、その間は副作用のリスクがあることは否めないと思われます。
また、ワクチンの効き方と副作用は人種や民族によっても異なる場合があります。
3)ウイルスが遺伝子変異を経て枝分かれしており、一つのワクチンが全てのウイルスに適応できるとは限らない
現在のところ、大きな枝が4系統あり、日本ではさらに1系統発生していると報告されています。また、枝分かれが今後どの程度進むのかもわかりません。
4)対策を十分講じようとしない企業、学校、国が感染源あるいは感染要因になっている
新型コロナウイルス感染症がこれだけ大きな問題になっても、十分な対策を講じない企業が一定の比率であるようです。集団行動、集団生活は止めるべきですが、そうしようとしない学校があり、実際に感染クラスターが発生しています。国は国でテレワークを推奨しておきながら、一方で「Go Toキャンペーン」を行っており、逆方向の効果が出ていると思われます。日本全体では依然として感染源、感染要因が少なからずある状態です。
5)過度の楽観論が出ている
新型コロナウイルスは、重症者は一部で、感染者の多くが無症状者、軽症者です。また、日本では諸外国に比べて死亡率が低くなっています。グラフ1~3を見ると、感染第2波が日本と米国では収束に向かっており、英国では第2波を抑え込んだように見受けられます。
そのためと考えられますが、新型コロナウイルスに対する楽観論がでています。インフルエンザと同程度の脅威しかないとか、既に日本では集団免疫が成立しているなどの見方です。
インフルエンザには安全なワクチンと治療薬があるため、新型コロナウイルスとは比較対象になりません。免疫については不明な点が多く、一度感染したら二度と感染しないのか、はっきりとしていません(抗体が形成されても、それが急速に減少する、あるいは抗体が形成されてもそれが効かないなどの現象が報告されています)。
このような楽観論は、かえって感染を広げる要因になるだけでなく、感染を恐れる人たちを過度に自粛させることにもなりかねません。
このウイルスが怖いのは、感染すると血管を通じて全身に回り持病の部分を直撃すること、脳に達して脳を損傷する場合があることなどです。軽症者や若年層の感染者でも肺が損傷するなどの異常や、長期の体調不良が見られるケースがあります。数多くいると考えられている無症状者、軽症者にも一定の感染力がある模様です。世界的に感染が広がってまだ8カ月であり、この病気の正体が急速に解明されつつあることは事実ですが、全容が分かったわけではありません。感染しないに越したことはありません。
6)開発中のワクチンが効かない場合や我々に油断があった場合は、第3波の可能性がある
日米で第2波は収束に向かいつつある模様ですが、油断はできません。前述の2種類のワクチンは早ければ年内に上市され投与が開始される可能性がありますが、これが十分効かない場合や副作用が出た場合、あるいは社会全体が油断した場合、第3波、第4波が到来する可能性があります。
このように考えていくと、外国人に対しても、日本人に対しても、治療法が確立され、安全なワクチンが開発されるまでは、オンラインで可能なことは全てオンラインで行い、人混みや集団行動を避けて生活する「巣ごもり」を続けざるを得ないと思われます。
グラフ1 新型コロナウイルス感染症の感染者数と死亡者数(日本)
グラフ2 新型コロナウイルス感染症の感染者数(米国)
グラフ3 新型コロナウイルス感染症の感染者数(英国)