危ういワクチン開発頼み

 また、ワクチン開発まで最短で年内としても、まだ3カ月以上あります。経済も回復途上にあるとはいえ、ワクチン開発まで株価が持ちこたえられるかどうか、不透明です。ワクチン開発期待で上昇してきた株価をここからさらに3カ月、同様に押し上げてくれるのか、あるいは押し上げなくても、ほぼ新型コロナ前の水準に回復した株価を維持することができるのかどうかに、注視する必要があります。

 トランプ大統領は「2021年には平常に戻る」と公約を掲げました。しかし、ワクチンが年内に開発されたからといって、すぐに経済活動すべてが元に戻るというものではなさそうです。

 ワクチンが国民全員に行き渡るまでさらに数カ月かかることが予想されます。そして全体に行き渡る本数が確保されても、米国民の3分の1がワクチン接種を拒否するとのアンケートも出ており、経済の完全回復には時間がかかりそうです。

 さらに、ワクチン自体も抗体がいつまで持続するのか、あるいはウイルスが変異すれば新しいワクチンが必要になるのか、従ってインフルエンザと同じように毎年打たなくてはいけないような可能性が出てくることも予想されます。

 株式市場は、これらのことを織り込み、現実とのギャップを意識し始めると調整局面に入るかもしれませんが、そのタイミングはいつになるのでしょうか。米大統領選挙の勝敗がきっかけになるのか、それとも選挙前の候補者の討論会による直接対決がきっかけになるのか、あるいは年末が近づくにつれて、開発が進展しないことによって現実を突きつけられることがきっかけになるのかどうか注目したいと思います。

 FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策や政策目標の変更もきっかけになるかもしれません。そういう意味で毎年注目度が高い、27日予定のジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演にも注目です。

 もし、これらがきっかけになって期待が失望に変われば、株が調整され、クロス円が調整され、クロス円が調整されればドル/円の円高への抑制要因が剥がれることになりそうです。