最高値を更新するNY株式市場

 週明け24日(月)のNY株式市場では、ワクチン開発の進展によって世界経済の正常化への期待が高まり、NYダウ平均株価はボーイング株など、運輸セクター株が上昇して2月21日以来の2万8,000ドル台を回復し、ほぼ半年ぶりの高値で取引を終えました。ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数も連日で最高値を更新しました。

 このNY株高の流れを受けて、翌25日(火)の日経平均株価は、新型コロナウイルスの感染拡大による急落前の2月21日の終値2万3,386円74銭を、一時約6カ月ぶりに上回りました。上げ幅は一時400円を超えましたが、終値は2万3,296円77銭と311円26銭高となりました。やはり、コロナ対策による世界経済の正常化への期待が高まり、空輸、海運、鉄鋼など景気敏感株が買われたようです。

米大統領選を強く意識した楽観的なトランプ発言

 トランプ米大統領は8月24~27日の共和党大会に先立って、2期目の政策目標を発表しました。その中に年末までに新型コロナウイルスのワクチンを開発し、2021年中に平常に戻るという目標があります。トランプ氏は米大統領選挙を意識して、これまでも年内にワクチンが開発され、2021年には経済は回復していると、楽観的な発言を繰り返してきました。このことを公約として政策目標に掲げたことも、週明け24日の株式市場を一層後押ししたようです。

 マーケットもワクチンが開発された後の、コロナ後の経済を見据えた動きが出始めています。

 株価はコロナ前の水準にほぼ回復しましたが、実体経済とはギャップが大き過ぎるとの見方があります。

 トランプ氏は雇用についても「10カ月で1,000万人の雇用を創出する」との公約を掲げました。現状では経済は3割減少し、失業者もまだ1,600万人超、抱えている状況です。1,000万人の雇用を創出しても1,600万人超の失業者をカバーするには遠く、また、「10カ月」という期間も、いつから10カ月なのか具体的な時期を示してはいません。

危ういワクチン開発頼み

 また、ワクチン開発まで最短で年内としても、まだ3カ月以上あります。経済も回復途上にあるとはいえ、ワクチン開発まで株価が持ちこたえられるかどうか、不透明です。ワクチン開発期待で上昇してきた株価をここからさらに3カ月、同様に押し上げてくれるのか、あるいは押し上げなくても、ほぼ新型コロナ前の水準に回復した株価を維持することができるのかどうかに、注視する必要があります。

 トランプ大統領は「2021年には平常に戻る」と公約を掲げました。しかし、ワクチンが年内に開発されたからといって、すぐに経済活動すべてが元に戻るというものではなさそうです。

 ワクチンが国民全員に行き渡るまでさらに数カ月かかることが予想されます。そして全体に行き渡る本数が確保されても、米国民の3分の1がワクチン接種を拒否するとのアンケートも出ており、経済の完全回復には時間がかかりそうです。

 さらに、ワクチン自体も抗体がいつまで持続するのか、あるいはウイルスが変異すれば新しいワクチンが必要になるのか、従ってインフルエンザと同じように毎年打たなくてはいけないような可能性が出てくることも予想されます。

 株式市場は、これらのことを織り込み、現実とのギャップを意識し始めると調整局面に入るかもしれませんが、そのタイミングはいつになるのでしょうか。米大統領選挙の勝敗がきっかけになるのか、それとも選挙前の候補者の討論会による直接対決がきっかけになるのか、あるいは年末が近づくにつれて、開発が進展しないことによって現実を突きつけられることがきっかけになるのかどうか注目したいと思います。

 FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策や政策目標の変更もきっかけになるかもしれません。そういう意味で毎年注目度が高い、27日予定のジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演にも注目です。

 もし、これらがきっかけになって期待が失望に変われば、株が調整され、クロス円が調整され、クロス円が調整されればドル/円の円高への抑制要因が剥がれることになりそうです。

ヒートアップする米大統領選挙!重要日程をチェック

 共和党、民主党の公約が発表されましたが、米大統領選挙は今後ますますヒートアップしてきます。下記日程の直接対決の討論会が最も注目されますが、特に、10月7日の副大統領候補の討論会に注目です。

 ハリス氏が副大統領候補に指名されましたが、期待されていたほどの効果はありませんでした。バイデン氏が支持率でトランプ氏を引き離していたものの、これがむしろ縮まっている状況下で、ハリス氏が副統領候補の討論会で挽回できるかどうか注目です。

 また、今回の選挙では郵便投票が争点として注目されています。民主党は新型コロナ感染拡大を防ぐために郵便での投票を推していますが、トランプ氏は郵便投票については、偽造や成りすましなどの不正投票が懸念されると猛反対しています。これは郵便投票によってマイノリティーなどの投票率が上がり、自分に不利になる可能性があるとトランプ氏は見ているようです。また、郵便投票の不正を主張することによって、万が一の場合に法廷闘争に持ち込むための伏線を張っているとの見方もあります。

 2000年のブッシュ対ゴアの大統領選挙ではフロリダ州の選挙が法廷闘争に持ち込まれ、勝敗が決したのは12月に入ってからでした。今回もどちらかが圧勝しなければ、勝敗に時間がかかるかもしれません。圧勝の場合でも郵便投票の開票には時間がかかると言われており、11月3日や翌4日では結果が分からない可能性もあり、注意が必要です。

米大統領選の日程

日程 重要イベント
8月26日 ペンス副大統領が指名受託演説
8月27日 トランプ大統領が指名受託演説
9月29日 トランプ氏とバイデン氏の第1回討論会
10月7日 ペンス氏とハリス氏の討論会
10月15日 トランプ氏とバイデン氏の第2回討論会
10月22日 トランプ氏とバイデン氏の第3回討論会
11月3日 米国大統領選本選投開票