バブル崩壊を経て復活した日本の大手ゼネコン

 以下、ご参考まで、ゼネコン株の過去約30年の推移を簡単にレビューします。まず、建設業株価指数の推移をご覧ください。

東証一部・建設業株価指数の月次推移:1993年末~2020年8月(24日まで)

【1】1990年代:バブル崩壊期
大手ゼネコン株は、1980年代後半、不動産・建設バブルで高騰しました。1990年代に入ってからは、バブル崩壊で暴落しました。1980年代後半に、ゴルフ場への投資を膨らませた建設・土木業は、1990年代は、財務内容が悪化し、破綻も増えました。

 1995年に阪神淡路大震災が起こった時、復興需要が出る思惑で、一時株価が上がりましたが、すぐにまた急落に転じました。まだ不動産・建設バブル崩壊中だったからです。

【2】2007年ミニバブルで復活、ミニバブルはすぐに崩壊
 2003年を過ぎ、建設・不動産バブルの処理が終わると、建設業の株価はようやく底打ちしました。2007年の「不動産ミニバブル」に向けて、再び、株価上昇が続きました。

 ところが、2007年のミニバブルは、2008年にリーマン・ショックが起こると、あえなく崩壊しました。2008年以降、不動産価格が下落する中、再び建設業も不況入りしました。

【3】アベノミクスで復活
 2013年、アベノミクスがスタートすると、建設株は次のブームを迎えます。「アベノミクスの3本の矢(3つの基本戦略)」の2本目に、「機動的な財政」が挙げられ、10兆円の公共投資が発動されました。不動産価格も底打ち、民間の建設ブームも復活しました。

 そのうち東京五輪・リニア新幹線・国土強靭化政策などのプロジュクトがスタートし、建設業界は活況にわきました。ただし、2013~2014年は、過当競争体質が変わらず、採算無視の受注が多かったため、建設業界は「利益なき繁忙」に陥りました。

 やがて、人手不足から施工能力に限界が生じ、ゼネコンは選別受注を始めました。そこから、建設粗利が改善し、建設会社の利益拡大が進みました。2014年ころから「利益なき繁忙」が終わり、「利益拡大をともなう繁忙」に変わりました。

 2014年10月に消費税が引き上げられましたが、その時、「消費税引き上げを下請けに転嫁するのは禁止」と政府から指示が出ました。公共投資について、あまり厳しく競争入札を実施して、価格を下げさせてはいけないとする風潮が広がりました。公共投資の価格を低く決めると、採算に苦しむ建設会社が下請けにしわ寄せするので良くないと言われました。その後、公共投資の受注採算も改善しました。

 その後、大手ゼネコンは軒並み最高益を更新しました。ところが、株価は2018年以降、下がるようになりました。2020年まで繁忙で、その後、仕事が減るとの見方がでたことにもよります。また、以下のような悪材料が続いたことも、株価が売られる要因となりました。

◆建設業界に不正建築が次々と見つかったこと
◆リニア新幹線で談合問題が起きたこと
◆東京五輪や、豊洲(築地新市場)関連の工事で価格が高過ぎると問題視する動きが広がり、一部価格の引き下げもあったこと。

こうしたニュースフローが、ゼネコン業界にネガティブに響きました。

 2020年コロナ・ショックによる、建設工事遅延で、大手ゼネコンの業績は軒並み悪化しました。ただし、株価ははやくから低迷していたので、減益でもPERなどのバリュエーションで、ゼネコン株は割安と判断できる低い水準にあります。

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