為替DI:投資家の「円高」見通し、一段と強まる

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「8月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 7月末に楽天証券が実施した相場アンケート結果によると、回答頂いた個人投資家5,318人の約52%(2,776人)が、8月のドル/円は「ドル安/円高に動く」と予想していることが分かりました。「円高」が過半数を上回ったのは今年の3月以来のこと。

「円安に動く」は最も少ない約19%(999人)。「動かない(わからない)」は約29%(1,543人)でした。

 DI(円安見通しと円高見通しの差)は▲33.41で 5カ月連続のマイナス。マイナス幅は先月より10.9ポイントアップしました。個人投資家のドル/円見通しは3月から一貫して「ドル安・円高」ですが、ここにきて、投資家の円高見通しがさらに強まっていることが分かりました。

 7月のドル/円は初日(1日)につけた108.16円が高値。上抜けに失敗した後は106円台半ばから107円台半ばの比較的狭いレンジ内で取引を続けていましたが、最後の週になって動きだし、3月以来のドル安・円高水準である104.19円まで下落しました。

 ドル下落の動きを「リスクオンになったからドル安」と解説したところもありますが、それはどうでしょうか。確かに、コロナウイルスが一時的に収束に向かったときには、有事のドルが不要になったからという理由でドルが売られたこともありました。

 7月にユーロが買われた(ドルが売られた)理由は「ユーロ由来」の理由であって、ドルに主導権があったわけではないです。EU(欧州連合)は欧州復興基金の設立の合意にこぎつけました。政治(EU)と金融(ECB)がコラボして周辺国の破綻リスクが格段に小さくなったおかげで投資家は安心して欧州に投資できるようになりました。欧州株式市場の上昇が、ユーロのトレンドを変えるきっかけになったのです。

 欧州諸国が米国に比べてコロナ第2波をうまくやり過ごして、順調に経済再開をスタートさせていることも、経済面で優位に立っています。(ただし、欧州のなかでもGo Toトラベルを積極的に展開していたスペインでは感染者が拡大。)

 7月の会合でFOMC(米連邦公開市場委員会)は、FF(フェデラルファンド)金利の誘導目標レンジを、少なくとも2年後の2022年末までゼロ付近で維持するとの見通しを示しました。これは以前から知らされていたことで驚くことではありません。

 ただし今回は、ゼロ金利政策の継続と米国経済のアンダーパフォーマンスのサイクルが一致してしまったことが問題です。

 米国の景気見通しが悪化するのとは対照的に欧州は上向き、その差2018年1月以来の水準まで広がっています。その時のユーロ/ドルは1.25ドル台。そう考えると、ユーロにはまだ上昇余地があるといえます。

 7月のユーロ/円の終値は124.71円。6月終値に比べて約3.80円ユーロ高/円安になりました。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 7月末に楽天証券が実施した相場アンケート調査の結果によると、個人投資家5,318人の約32%(1,701人)が、8月のユーロ/円は「ユーロ安/円高に動く」と予想していることが分かりました。

 一方で「ユーロ高/円安に動く」は、先月より3.7ポイント増えたものの、依然として最も少ない約20%(1,087人)。「動かない(わからない)」は、約48%(2,530人)でした。

 ユーロ/円のDI(円安見通しと円高見通しの差)は▲11.55で5カ月連続のマイナス。マイナス幅は先月に比べ5.3ポイント縮小しました。ユーロ/ドルは、新たに中期的上昇トレンドが始まり、ドル安を巻き込んだ動きに発展しています。しかしアンケート結果を見る限り、個人投資家の8割はこの流れに乗り遅れてしまったようです。

 7月の豪ドル/円の終値は74.58円。6月の終値に比べて1.08円の豪ドル高/円安でした。6月終値に比べて約1.10円豪ドル高/円安になりました。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 7月末に楽天証券が実施した相場アンケート調査の結果によると、個人投資家5,318人の約31%(1,638人)が、8月の豪ドル/円は「豪ドル安/円高に動く」と予想していることが分かりました。

「豪ドル高/円安に動く」は約17%(924人)で最も少なく、また「動かない(分からない)」は約52%(2,660人)で半数を超えています。

 豪ドル/円のDI(円安見通しと円高見通しの差)は▲13.43で5カ月連続のマイナス。マイナス幅は先月から1.5ポイント拡大して、豪ドル安見通しが、わずかですがさらに強まっています。

 相場アンケート調査によると、多数の個人投資家は、コロナパンデミック発生以来、豪ドル/円に対しては「動かないか、あるいは豪ドル安」という相場観を頑固に守り続けています。ただ、実際のマーケットでは、3月から7月の5カ月間のうちに、17円も「豪ドル高/円安」に動きました。