日経平均の見通し 

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「不安要素のくすぶりでDIのマイナス傾向が続く」

 今回調査における日経平均の見通しDIは1カ月先がマイナス35.60、3カ月先はマイナス25.74となりました。前回調査の結果がそれぞれマイナス36.64、マイナス20.42でしたので、引き続き、株安の見通しが根強いことがうかがえます。調査期間中の日経平均が続落していたことも影響していると思われます。

 回答の内訳グラフで具体的な状況を見てみると、1カ月先の強気派の割合は8.99%、3カ月先が16.53%となっています。前回の結果(それぞれ9.76%、18.80%)からさらに減少しており、強気派がなかなか増えてこない印象です。残りのパイを弱気派と中立派で分けている格好です。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 確かに、日経平均は7月末に2万2,000円台割れとなりましたが、8月に入るとすぐに取り戻しており、2万2,000円台を中心とした株価水準を保っています。そのため、数値の結果が示すほど、先行きの株安を見通しているわけではなさそうです。その一方で、株価上昇の期待感も膨らまない面もあります。足元で気掛かりとされているのは、「為替市場のドル安/円高」と、「米中対立の悪化」です。

 先ほども述べた通り、日経平均は7月の月末にかけて軟調となりましたが、その理由のひとつになっていたのはドル安/円高です。4月以降のドル/円相場は、1ドル106~108円をメインレンジとする中、時折110円の円安を目指す動きとなっていたのですが、7月末にかけて104円台前半まで円高が進みました。

 FRB(米連邦準備制度理事会)による積極的な金融緩和や、最低水準となっている米長期金利など、もともとドル安になりやすい地合いとなっていましたが、6月の個人所得が予想以上に減少したことや、追加の経済政策をめぐる与野党の協議が難航する中で、失業給付金の特例措置(週600ドルの追加給付)が7月末で終了し、今後の消費への影響が懸念されたことがドル安を加速させました。

 さらに、米中対立の悪化も警戒材料です。足元では米中領事館の閉鎖や、動画投稿アプリ「ティックトック」の利用制限などの動きが見られています。従来であれば、「米大統領選を控えた政治的アピールの面が強く、政経分離(政治と経済を切り離す)の考え方により、両国の利益を大きく損なうことはないだろう」という見方となり、過度の悲観は禁物となります。

 ただし、今回については、領事館閉鎖による外交チャネルの削減という新しいアプローチを採っていることや、米国がこれまで避けてきた習近平氏への名指し批判をしはじめたこと、そして、コロナ禍以降の中国の外交が強硬姿勢を強めていることなど、対立の構図がさらに深まった可能性があります。まだ、米国の本気度が分からないため、積極的な売り材料とはなっていませんが、しばらくは株価の重石になりそうです。