今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「金やプラチナ地金」を選択したお客様の割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF、REIT、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、金先物取引、原油先物取引、その他の商品先物、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「金やプラチナ地金」を選択した人の割合 (2019年1月~2020年6月)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2020年6月の調査で、「金やプラチナ地金」を選択した人の割合は、17.7%でした。2019年1月以降、徐々に上値を切り上げてきています。

 (1)米国の金融政策、(2)米国株の動向、(3)新型コロナウイルスの感染状況が、金やプラチナ地金を今後、投資してみたい金融商品として選択するかどうかを考える、材料になっているとみられます。

(1)米国の金融政策について:米国で昨年7月に2008年12月以来となる利下げが行われたり、今年3月以降、資産の買い入れ額が増えたりしました。

 ドル金利の低下やドルの流通量の増加は、“世界のお金”というドルと同じ特徴を持つ金(ゴールド)を保有する妙味が、(ドルに対し)相対的に上昇する要因になります。米国で金融緩和的な措置が講じられている現在は、金はドルの代わり、“代替通貨”として注目が集まりやすくなっていると言えます。

(2)米国株の動向について:株価が上昇すると含み益が大きくなったり、新たに株を保有する動機が生まれたり、配当が多くなったりして、金利がつかない金を保有する妙味が、(株に対し)相対的に低下します。

 逆もしかりで、株価が下落したり上昇しなくなったりすると、金は(株に対し)相対的に保有する妙味が増します。その意味で、現在は、株の代わり、“代替資産”として注目が集まりやすくなっていると言えます。

(3)新型コロナウイルスの感染状況について:世界規模の不安や懸念、心配事が拡大した時、つまり“有事”が発生した時、資産の預け先を模索する動きが強まることがあります。

 パンデミック化し、現在もなお、世界全体で感染拡大が続いていることから、新型コロナは“有事”化していると言え、このような状況の中、金は“資金の逃避先”として注目が集まりやすくなっていると言えます。

(1)から(3)のことが前提となり、個人投資家の皆さんは、金や金価格に連動する傾向があるプラチナを注目されているのだと思います。

 また、このことから分かるとおり、金価格の足元の上昇は、“有事”だけではなく、代替通貨(ドルの代わり)、代替資産(株の代わり)、という複数の材料が作用し、起きていると考えられます。

 材料を点で見ずに、視野を広く持ち、金相場を見守ることが重要です。次回以降も、「金やプラチナ地金」を選択した個人投資家の皆様の割合に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2020年6月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年6月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成