はじめに

 今回のアンケート調査は2020年6月29日(月)~7月1日(水)の期間で行われました。

 2020年相場の折り返し地点となる6月末の日経平均株価は2万2,288円で取引を終え、前月末終値(2万1,877円)からは411円高となりました。月足ベースでも3カ月連続の上昇を見せたわけですが、月間の株価推移を振り返ると、値動きに富んだ展開でした。

 6月上旬は前月からの上昇基調の流れを引き継ぎ、日経平均は2万2,000円台超えでスタートし、その勢いに乗って一気に2万3,000円台乗せまで上げ幅を拡大させました。経済活動の再開や、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬開発への期待、そして、売り方の買い戻しなどの需給面も追い風となりました。

 ただし、2万3,000円台から上値を伸ばせず、月半ばの15~16日にかけては前日比774円安と1,051円高の乱高下となり、その後は月末まで2万2,000円台でのもみ合いが続きました。新型コロナウイルス感染の再拡大への警戒や利益確定売りなどに押される場面が目立ちました。

 このような中で行われた今回のアンケートは、4,950名を超える個人投資家からの回答を頂きましたが、DIの結果は株安・円高の見通しが強まる格好となりました。株価上昇の勢いが一服したことを受けて、先行きに対する強気の見方が減少した印象です。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

株価の上昇一服でDIがマイナスに沈む

 今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先がマイナス36.64、3カ月先はマイナス20.42となりました。ようやくプラスに戻した前回調査の結果(それぞれプラス17.23、プラス4.14)から、再びマイナスに沈んだ格好です。特に1カ月先DIの数値の落ち込みが際立っています。

 回答の内訳グラフで具体的な状況を見てみると、1カ月先の強気派の割合は9.76%と1割に届かず、弱気派と中立派がそれぞれ4割以上を占めていることが分かります。3カ月先の強気派も18.80%と前回(30.75%)から割合を減らしています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 結果の数値だけを見てしまうと、株式市場の見通しに対してかなり弱気に傾いている印象を持ってしまいますが、今回の調査期間(6月29日~7日1日)の日経平均がこれまで下値のサポートとして機能していた25日移動平均線を下回って、やや弱含みで推移していたことを考慮する必要がありますし、実際の株価水準もDIや内訳グラフが示しているほど、崩れているわけではありません。

 日経平均は3月19日の安値から6月9日の高値までの約3カ月間にわたって、ほぼ右肩上がりで上昇し、株価自体も1万6,358円から2万3,185円へと6,827円も引き上げてきました。そのため、今回の調査結果は、「今後の日経平均が大きく下落するシナリオが濃厚になった」というよりは、「このまま上値をトライするのはさすがに難しいだろう」、「しばらくは調整の場面が訪れてもおかしくはないだろう」という見方の増加が反映されたものと思われます。

 株式市場は7月に入り、2020年相場の後半戦へと突入しましたが、2月上旬からのいわゆる「コロナ・ショック」による株価の下落局面と、先ほども触れた株価の戻り局面を経て、もみ合いが続いている状況です。

 言い換えれば、「不安」を先取りして大きく下落し、その後に「期待」を先取りして大きく反発してきたことで、心理面での織り込みはかなり進んだと思われます。そして、足元は「実際のところはどうなのか?」を、新型コロナ感染や経済指標、企業業績などの状況をにらみつつ、株価の水準感を探っていく局面と考えられます。

 足元の相場を支えてきたのは、国内外で経済活動が再開されて実体経済回復への期待があること、経済指標が改善や底打ちを示す結果が続いていること、日・米・欧の金融緩和による資金供給や信用リスク不安が後退していること、コロナ治療薬やワクチン開発が順調に進んでいるとの見方、高水準で積み上っている売り方の買い戻し圧力などの需給面などが挙げられます。

 その中でも存在感が大きいのは金融緩和です。例えば今年に入ってからの日銀のETF(上場投資信託)買いは6月末時点で4兆7,000億円を超えています。昨年2019年の購入合計額が4兆3,772億円ですので、この半年間で昨年1年分の額を上回ったことになります。さらに、欧米の金融緩和であふれたマネーが、比較的新型コロナの影響度がまともとされる日本市場に流れている動きもあります。

 仮に、「新型コロナの拡大が止まらず、実体経済の悪化懸念が高まったとしても、さらなる金融緩和が相場を支える」という見方は続きそうです。多少の悪材料が出てきても、需給の支えによって売り込みきれず、結果的に目先の株価下落は「買い」となるため、株価もある程度の水準を維持すると思われます。

 ただ、先日まで米株市場が最高値をつけていたこと、日本株も高値圏まで戻してきたことを踏まえると、需給要因が主力となっている株価上昇はスッキリした上値期待へとつながりにくいほか、日経平均2万3,000~2万4,000円台の水準は、2019年11月~2020年2月上旬にかけて3カ月以上、もみ合いが続いていたこともあり、抵抗帯として意識されるため、7月以降の相場はこうした上値の重たさに抗(あらが)える力があるかどうかが試されることになりそうです。

今月の質問「ふるさと納税をしていますか?」

楽天証券経済研究所 根岸 美知代

 ふるさと納税は、例年10~12月にする方が多いのですが、今年は、新型コロナウイルスの影響を受けている自治体を応援しようという動きが始まっています。

【今月の質問1】 2019年は、ふるさと納税をしましたか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

【今月の質問2】 2020年のふるさと納税は、いつしましたか、または、いつする予定ですか?(複数選択可)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 2019年と比べると2020年は「ふるさと納税をした・する予定」と回答された方が12.2%多くなっていることが分かりました。

 また、「ふるさと納税をいつしましたか、または、いつする予定ですか?」という質問では、4~6月が多くなっております。

 同じ質問を2018年10月に楽天DIアンケートで行った時は、1~3月、4~6月、7~9月、10~12月と年末にかけてだんだんと多くなっていく結果となりました。やはり、2020年は例年とは違い、緊急事態宣言下のなか、自治体を応援したい!応援しよう!という動きがあったのではないかと思います。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

【今月の質問3】 ふるさと納税の他に、利用している節税制度はありますか?(複数回答可)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「NISAまたはつみたてNISA」を利用している方が半数近くの48.3%、「iDeCo(確定拠出年金)」が18.4%、「医療費控除」が17.5%、「特にない」が15.8%という結果となりました。

 消費税率引き上げ対策のキャッシュレス決済ポイント還元も6月末で終了しました。これからも節税対策をうまく利用していけたらよいと思います。

 今回もご回答いただきましてありがとうございました。

為替DI:ドル/円に天井感?投資家は「円高」を期待

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

「7月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 6月末に楽天証券が実施した相場アンケートでは、回答いただいた4,951人の個人投資家の約41%(2,045人)が、7月のドル/円は「ドル安/円高に動く」と考えていることが分かりました。

「動かない(分からない)」は約41%(2,021人)で、「円高」と同率首位。「円安に動く」と考える人は最も少なく、約18%(885人)しかいませんでした。

 DI(円安見通しと円高見通しの差)は▲23.43で 4カ月連続のマイナス。マイナス幅は先月(▲7.28)より拡大しています。ドル/円が107円台で安定しているなかでも、個人投資家の見通しは円高に向かって強まっているようです。

 世界の投資家を悩ませている最大の「謎」。それは最悪の経済ファンダメンタルズに対して、なぜ株価が史上最高値かあるいはそれに近い水準で取引されているのかということです。

 新型コロナウイルス感染流行によって、世界経済は数百年ぶりとはいわないまでも、この数十年間で最も急激かつ深刻な同時不況に陥りました。にもかかわらずNY株式市場は四半期では21年ぶりの大幅上昇を記録しているのです。

 実態経済と金融市場のかい離が広がるなかで、今月2日に発表された米国の6月雇用統計では、NFP(雇用者)の増加数が予想を大きく上回る480万人。失業率は11.1%に低下して2カ月連続の大幅改善となりました。

 この予想外ともいえる6月雇用統計の強さはしかし、実態経済(の悪さ)と株高のギャップを説明する材料になってくれました。米国の労働市場が、驚異的なスピードで回復していくという予想に立って考えるなら、米国株価の上昇は正当化されるという理由になったのです。

 世界株高の原動力は、世界の主要中央銀行と中央政府による金融・財政支援であることは確かです。FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、「予測できる将来にわたって、FRBは超低金利政策を継続する」と言明しています。株を買うことは合理的な投資判断だと中央銀行のお墨付きをいただいているようなものです。

 しかし、この未曽有の景気刺激策が永遠に続くわけがない。先週の米雇用統計があまりに強い数字だったせいで、景気刺激策が意外に早く終了するのではないかという、「ぜいたくな不安」が頭をもたげています。もしそうなれば、金融市場の動きが逆回転するおそれが高まるわけで、実態経済が株価に近づくよりも先に、株価が実態経済に近づくことになるでしょう。

 トランプ米大統領にとってもこれは頭の痛い問題で、扱いを一歩間違えると支持を失い再選に赤信号が灯ってしまう。雇用者がこのまま新型コロナ前の水準近くまで回復できたら、大きな得点になることは間違いないでしょうが、雇用市場が回復するほど新たな景気刺激策の必要性は薄れ、株式市場が下落するリスクもまた高まるのです。

 6月のユーロ/円の終値は120.86円。5月の終値に比べて1.12円のユーロ高/円安でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 6月末に楽天証券が投資家を対象に実施した相場アンケート調査によると、回答頂いた4,951人のうち、約33%(1,663人)が、7月のユーロ/円は「ユーロ安/円高に動く」と考えていることが分かりました。

 一方で「ユーロ高/円安に動く」は最も少ない約17%(829人)。「動かない(分からない)」は、約50%(2,459人)でした。

 

 ユーロ/円のDI(円安見通しから円高見通しを引いたもの)は▲16.85で4カ月連続のマイナス。マイナス幅は先月(▲17.73)に比べ0.9ポイント低くなりました。FX市場ではユーロに新しいトレンドが始まったと話題になっています。しかしアンケート結果の限り、日本の個人投資家は大きな流れに発展するはずがないと考えているようです。

 6月の豪ドル/円の終値は74.58円。5月の終値に比べて2.70円の豪ドル高/円安でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
 

 楽天証券が6月末に投資家を対象に実施した相場アンケート調査によると、回答頂いた4,951人のうち、約29%(1,440人)が、7月の豪ドル/円は「豪ドル安/円高に動く」と考えていることが分かりました。

 一方「豪ドル高/円安に動く」は最も少ない約17%(851人)。「動かない(分からない)」は約54%(2,660人)で半数を超えています。

 豪ドル/円のDI(円安見通しから円高見通しを引いたもの)は▲11.90で4ヵ月連続のマイナス。マイナス幅は先月(▲10.82)から1.1ポイント拡大。

 ちなみに豪ドル/円は3月の終値から比べると8.50円以上も「豪ドル高/円安」に動いています。にもかかわらず半数以上の投資家が、その期間ずっと豪ドル/円に対して「動かない」という見通しを維持しているのは興味深いことです。

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「金やプラチナ地金」を選択したお客様の割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、国内株式、外国株式、投資信託、ETF、REIT、国内債券、海外債券、FX(外国為替証拠金取引)、金やプラチナ地金、金先物取引、原油先物取引、その他の商品先物、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい金融商品」で、「金やプラチナ地金」を選択した人の割合 (2019年1月~2020年6月)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2020年6月の調査で、「金やプラチナ地金」を選択した人の割合は、17.7%でした。2019年1月以降、徐々に上値を切り上げてきています。

 (1)米国の金融政策、(2)米国株の動向、(3)新型コロナウイルスの感染状況が、金やプラチナ地金を今後、投資してみたい金融商品として選択するかどうかを考える、材料になっているとみられます。

(1)米国の金融政策について:米国で昨年7月に2008年12月以来となる利下げが行われたり、今年3月以降、資産の買い入れ額が増えたりしました。

 ドル金利の低下やドルの流通量の増加は、“世界のお金”というドルと同じ特徴を持つ金(ゴールド)を保有する妙味が、(ドルに対し)相対的に上昇する要因になります。米国で金融緩和的な措置が講じられている現在は、金はドルの代わり、“代替通貨”として注目が集まりやすくなっていると言えます。

(2)米国株の動向について:株価が上昇すると含み益が大きくなったり、新たに株を保有する動機が生まれたり、配当が多くなったりして、金利がつかない金を保有する妙味が、(株に対し)相対的に低下します。

 逆もしかりで、株価が下落したり上昇しなくなったりすると、金は(株に対し)相対的に保有する妙味が増します。その意味で、現在は、株の代わり、“代替資産”として注目が集まりやすくなっていると言えます。

(3)新型コロナウイルスの感染状況について:世界規模の不安や懸念、心配事が拡大した時、つまり“有事”が発生した時、資産の預け先を模索する動きが強まることがあります。

 パンデミック化し、現在もなお、世界全体で感染拡大が続いていることから、新型コロナは“有事”化していると言え、このような状況の中、金は“資金の逃避先”として注目が集まりやすくなっていると言えます。

(1)から(3)のことが前提となり、個人投資家の皆さんは、金や金価格に連動する傾向があるプラチナを注目されているのだと思います。

 また、このことから分かるとおり、金価格の足元の上昇は、“有事”だけではなく、代替通貨(ドルの代わり)、代替資産(株の代わり)、という複数の材料が作用し、起きていると考えられます。

 材料を点で見ずに、視野を広く持ち、金相場を見守ることが重要です。次回以降も、「金やプラチナ地金」を選択した個人投資家の皆様の割合に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2020年6月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年6月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成