銅生産はコロナ拡大中の南米がメイン。一部の鉱山では感染対策のため操業停止見込み

 ここまで、第1波を超え大規模な第2波を抑制していること、経済指標が好転していること、欧米で大規模な金融緩和が行われていることなど、需要に関わる面から、銅相場を見てきました。

 ここからは、供給に関わる面、特に生産量が最も多い、南米のチリの動向に注目します。チリは、世界の4分の1以上の銅鉱石を生産しています(下図参照)。

図:世界の銅鉱石生産量(2017年)

出所:JOGMECの資料より筆者作成

  以下のとおり、足元、南米は新型コロナウイルス感染拡大第1波の最中にあります。人口100万人あたりの感染者数は、銅鉱石の生産量世界1位と2位のチリとペルーで、ブラジルや米国を上回るスピードで増加しています。

図:人口100万人あたり感染者数 単位:人

出所:Bing-COVID-19-Dataおよび世界銀行などの資料より筆者作成

  チリの銅鉱石の主要産地である同国北部のアントファガスタ州では、以下のとおり、人口10万人あたりの感染者数が増加傾向にあります。同州には、資源メジャーが権益を持つ世界最大級の複数の銅鉱石の鉱山、Chuquicamata(チュキカマタ)、Escondida(エスコンディーダ)などがあり、国内生産のおよそ半分を生産すると言われています。

図:チリの主要生産地であるアントファガスタ州などの人口10万人あたりの感染者数(7月5日時点)

出所:米ジョンズ・ホプキンス大のデータより筆者作成

  米ジョンズ・ホプキンス大によれば、同州の10万人あたりの感染者数は、約1,617人です(7月5日時点)。この数は、現在感染者数が増加傾向にある、米国のフロリダ州、カリフォルニア州、テキサス州を上回る数字です。

 これに関連し、報道では、7月1日、チリ国営の世界最大級の銅生産企業であるCODELCO(コデルコ)の労働組合は、同社に対し、新型コロナウイルスの感染対策が万全ではないとし、アントファガスタ州での同社の操業停止を求めたとされています。

 新型コロナウイルスが、具体的に、世界の銅供給に大きな懸念を与える可能性が生じている、と言えそうです。