雇用は元通りになったわけではない

 しかし、底を打ったからといって、コロナ前の状態に戻ったわけではありません。この二つは全く別の話です。米雇用市場が回復するまでにはまだまだ長い時間が必要で、その過程では辛い痛みを覚悟しなくてはいけないと国際金融研究所は述べています。

 コロナ不況がこれまでの不況と大きく異なるのは、失業者がレジャーや接客など社会的距離感、いわゆるソーシャルディスタンスの取り方が難しい業種に集中していること。飲食店やホテル、小売などの業種で失われた雇用のうちの1/4は「永久に戻ることがない」という悲観的な試算も出ています。

 雇用市場に底打ち感が見えたというのに、コロナ感染の再拡大によってフロリダ州やテキサス州で経済再開にストップがかかりました。フロリダのディズニー・ワールドには再開延期を求める署名が集まっているそうです。復活しかけたサービス業の雇用がまた遅れ、底打ちが「トレンド化」する前に消えるおそれもあります。前向きだったカプラン連銀総裁のダラスはテキサス州にあります。

 今後雇用統計が改善していくとしても、重要なのは、コロナ前の水準に戻れるのか、ということです。今日は失業率が12.5%でもマーケットは良い数字だといって喜ぶでしょう。1年前の失業率は3.7%でした。1年後に8%だったら、同じように喜べるでしょうか。