過去3カ月の推移と今回の予想値 >>> 06/06 アップデート!

※矢印は、前月からの変化

5月雇用統計のレビュー

 BLS(米労働省労働統計局)が6月4日に発表した、5月の非農業部門雇用者数は、エコノミスト予想中央値▲750万人に対して250.9万人増加。失業率は13.3%に低下しました。

 労働市場の大幅な改善は、新型コロナ感染封じ込めのために3月と4月に抑制されていた経済活動が、限定的ながらも再開されたことを反映しています。5月の雇用では小売業やサービス業を中心に大幅に増加。一方で3月と4月の非農業部門雇用者数は下方修正となり、合わせて64.2万人の減少。失業率は13.3%で、2月以降9.8ポイント上昇。失業者数は2,100万人となりました。また5 月の平均時給は4月に比べて1.0%下落。平均時給の低下は、低賃金労働者の仕事の増加が主な理由と考えられます。

6月雇用統計は2月連続の大幅改善

 BLSが7月2日に発表する最新の雇用統計は、失業率は12.5%に下落(改善)、NFP(非農業部門雇用者数)は300万人増加、という予想になっています。前回5月の雇用統計は、マーケットに広がっていた悲観的見通しを大きく覆す強い結果となりました。今回6月はさらに良くなると期待されています。

 12.5%の失業率が果たして良いのかというご意見もあろうかと思いますが、2カ月連続で下落するならば、少なくとも、米労働市場に底打ちのサインといえるのではないでしょうか。雇用市場の悪化に歯止めがかかったことを確認して安心することが、今回雇用統計の目的のひとつといってよいでしょう。

 5月のサービス業ISM景況指数は、前月から大きく持ち直して、約2年ぶりの大幅上昇となりました。ロックダウンの中でデリバリービジネスが増えたことが強い結果につながったのです。米アマゾンは新型コロナ流行期間中の一時雇用者12万5,000人を正社員として採用すると発表。このように、米労働市場は一律に落ち込んでいるわけではなく、逆境を新たなビジネスチャンスに変える柔軟さと体力も持ち合わせています。それが日本や欧州との差です。ダラス連銀のカプラン総裁は「景気は5月に底を打った」と述べています。

雇用は元通りになったわけではない

 しかし、底を打ったからといって、コロナ前の状態に戻ったわけではありません。この二つは全く別の話です。米雇用市場が回復するまでにはまだまだ長い時間が必要で、その過程では辛い痛みを覚悟しなくてはいけないと国際金融研究所は述べています。

 コロナ不況がこれまでの不況と大きく異なるのは、失業者がレジャーや接客など社会的距離感、いわゆるソーシャルディスタンスの取り方が難しい業種に集中していること。飲食店やホテル、小売などの業種で失われた雇用のうちの1/4は「永久に戻ることがない」という悲観的な試算も出ています。

 雇用市場に底打ち感が見えたというのに、コロナ感染の再拡大によってフロリダ州やテキサス州で経済再開にストップがかかりました。フロリダのディズニー・ワールドには再開延期を求める署名が集まっているそうです。復活しかけたサービス業の雇用がまた遅れ、底打ちが「トレンド化」する前に消えるおそれもあります。前向きだったカプラン連銀総裁のダラスはテキサス州にあります。

 今後雇用統計が改善していくとしても、重要なのは、コロナ前の水準に戻れるのか、ということです。今日は失業率が12.5%でもマーケットは良い数字だといって喜ぶでしょう。1年前の失業率は3.7%でした。1年後に8%だったら、同じように喜べるでしょうか。