長期投資が大失敗を誘発する?

 しかし、いくら投資哲学として長期投資が素晴らしいとしても、過去の傾向が右肩上がりだったとしても、実際に利益を得ることができなければまったく意味がありません。平成バブル崩壊から30年経った今も日経平均株価はピークの半分程度です。

 筆者は、長期投資という考え方こそが、多くの個人投資家が株式投資で大失敗をしてしまう原因になっていると考えています。個人投資家は、このことに早く気付く必要があるのです。

 なぜならば、株式投資では絶対に大失敗を避けなければなりません。個人投資家にとって株式投資での大失敗といえば、買った株が買値より大きく値下がりし、多額の含み損をかかえた塩漬け株が発生してしまうことに他なりません。筆者はそう強く考えています。

 逆に言えば、塩漬け株の発生を防ぐことができれば大失敗を避けることができるわけです。塩漬け株防止に最も効果的なのは、何といっても早めの損切りです。
 ところが、筆者は、長期投資が塩漬け株の発生を助長していると考えます。

長期投資が損切りをしない言い訳になる

 投資家は、株価が買値より値下がりしたとき、損切りするかどうかの判断に迫られます。

 しかしながら、投資家の多くは、株価が買値より値下がりしてもそれは一時的なものであり、長期的に保有し続ければ値下がりが解消されて値上がりに転じる、としてなかなか損切りを実行しません。また、本当は損切りすべきと頭の中では分かっていても自身のプライドと実現損に強い抵抗があるために、そのまま持ち続け、損切りから逃げています。その際、長期投資を自らに対する損切り忌避のありがたい理由にしている投資家は多いと筆者は思います。

 株価が買値から下がったということは見込み違いだったことを表しています。ですから、早めの対応が必要になります。結論を先延ばしにした結果さらに株価が下落して含み損が大きく拡大してしまえばなす術がなくなってしまいます。10年、20年と長期投資を続けても買値を上回るどころかずるずると下げ続けてしまうケースが圧倒的に多いことは、平成バブル崩壊後の日本株の動きをみれば明らかです。傷口が浅いうちに適切な対処をしておく、これが特に日本株の個別銘柄に投資する際には非常に重要です。