対面営業の苦境?

 コロナの流行そのものと、コロナがもたらした生活習慣上の変化は、対面営業を主なチャネルとする金融機関のリテール・ビジネスにとって、大きな障害になるかもしれない。少なくとも、対面営業にとって、大きな試練ではあるだろう。

 他方、ネット・チャネルの銀行や証券会社のような金融機関にとっては、顧客へのサービスを拡大・改善するチャンスだと考えられる。筆者は、ネット証券の社員で幸いであった。

 もっとも、対面営業のリテール・ビジネスが簡単に滅びたり、あるいは短期間に無害なものになったりすることは考えにくいと、二つの理由で筆者は思っている。

 一つには他人と「密」な関係・状況を求める心理は多くの人(筆者自身も含まれる)にとって自然な感情だからだ。社会全体としても、感染症の問題が解決したら、人と人との「密」な関係を再構築する必要があるだろう。人間は社会的動物である。

 もう一つには非接触の形での営業手法が今後急速に発達すると予想できるからだ。例えば、単に「リモート」で顧客とやり取りするのでは現在のビデオ会議のようで迫力がないが、VR(ヴァーチャル・リアリティ)のような技術を応用すると、かつての対面営業以上の心理的な影響力を行使できるようになるかもしれない。いわゆる5Gの普及で通信が速くなることもあり、営業のイノベーションが起こる可能性が大いにある。

 ともかく、コロナと「人間のリスク」には、決して油断できない。