足元の株高には「コロナバブル」との声まで聞こえます。この相場には、株式相場の大底からの回復局面初期に起こりがちな短期オーバーシュート(行き過ぎた価格変動)と、コロナ禍を経た特殊な事情が絡んでいます。当レポートは「投資のチャンスはどこ?」の後編ですが、前編執筆以降の相場の進展も踏まえて、話を進めることにします。

コロナ・経済アップデート

 新型コロナウイルスの一大感染地は、欧米から新興国、特に中南米に移っています。先進国側では感染ピークアウトの安堵(あんど)、経済再開の高揚感が株高を促す面があるでしょう。

 米国の5月雇用統計では、失業率が市場予想の20%前後に対して実績13.3%(図表1)、非農業雇用者数が前月比予想▲800万~900万人に対して同実績+251万人と、想定外の改善となり、株価を一段高へ弾ませました。コロナ禍下で外出制限され、経済指標の変動が激しく、金融政策も大盤振る舞いという状況下、統計の集計がきちんとなされたか検証すべき部分はあります。それでも欧米経済の大底が4~5月だったという判断は妥当でしょう。

図表1:米国失業率改善という想定外

出所:Bloomberg Finance L.P.

  問題は、今後の回復軌道です。世界銀行の最新経済見通し(2020年6月8日公表、図表2)では、GDP(国内総生産)成長率が世界全体で2020年▲5.2%、2021年+4.2%です。米、欧、日それぞれも経済の落ち込みを2021年中に挽回できない想定です。主要国経済のコロナ不況からの回復が全治2~3年以上、という見立てに同意します。

 コロナ禍からの経済軌道はV字型よりU字型かと、議論してきました。しかし足元の経済再開の高揚感を踏まえて言えば、「レ」の字、それも「レ~」と波打って伸びるイメージが実感に近いと考えます。突然の経済停止、需要消失でストンと落ち、ヤキモキしながら新型コロナウイルス感染鎮静化を待ち、経済再開と共にサッと挽回に向かう、けれどもコロナ前の水準に届かない、それが「レ」です。水面に届かないまま重苦しい経済が続くのが「~」。ただし、その分、空前の政策の下支えも続き、ズブズブ沈んでいくわけでもないでしょう。

 マクロ経済の重い展望と、足元の株高の先行きについて、どう整合的に捉えて、投資に取り組むかを考えます。

図表2:世界銀行の経済見通し

出所:世界銀行(2020年6月8日公表)