株式相場の進み方

 経済が不調でも株高になるメカニズムはあります。一般的には、株式相場は好景気で高く、不景気で下がると理解されるでしょう。でも実は、株式相場サイクルは景気サイクルに先行する性質があります。景気悪化の途上でも、中央銀行が金融緩和を進めると、景気底入れ前に株価が上がり始めます。これを「不況下の株高」「金融相場」と呼称します。当レポートで、3月下旬から8月にかけて株高をイメージした理由もこれでした。

 不況下の株高ですから、経済も企業業績もまだ悪い局面であり、株高は期待に引っ張られて上伸します(図表3)。その初期には、株安局面で積み上がったショート(売りポジション)の巻き戻し、安値拾い派の焦燥買いが、相乗的に相場ラリーを加速させがちです。相場が上がると、なぜ上がるのかを説明する好材料ばかりが喧伝(けんでん)され、ミニバブルの様相を呈するのも常。足元の相場上昇にもこの様相があると判断されます。

 この初期的な株式ラリーは、通常サイクルでは数カ月で調整反落に至ると想定します。ショートカバー一巡、相場の半値戻し以上で安値拾い派の買い鈍化を経て、相場全体のスピードが鈍ると、実体経済や企業業績の見通しとギャップを再評価する冷静さも戻ります。ただし、その後も景気回復の持続が想定される場面であり、こうした相場の押し目はポジション積み増しの好機と考えられます。

図表3:景気と株価のサイクル軌道(イメージ)

出所:田中泰輔リサーチ