生産減少・在庫減少が発生すれば、年末にかけて、穀物価格は反発色を強める可能性も

 警戒国に“ウイルス”と“昆虫”が襲来していることで、小麦市場に上昇要因が生じていると書きました。これは、生産減少が価格上昇の要因になることを想定した話ですが、消費回復もまた、価格上昇の要因になることがあります。

 米国国内の大豆在庫が高水準であることについて、触れましたが、近い将来、この高水準に積み上がった在庫が、取り崩される可能性があると、筆者は考えています。

 11月の米大統領選挙に向けて、トランプ大統領が“農家票”を獲得するために、米国の農家にとって、有利な策を推進することで、在庫の取り崩しが起きる可能性があります。

 米国の農家にとって、在庫の取り崩しは喜ばしいことです。例えば、関係が悪化している中国と、貿易戦争をいったん鎮静化させて、中国に米国産大豆を購入させたり、中国以外の国々に、米国産大豆を購入させたりすることを実現すれば、農家は喜び、そのような策を推進したトランプ大統領を支持する可能性が生じます。

 そしてその時、市場では、過剰在庫が取り崩されたことを好感し、価格上昇の動機が生まれます。大豆価格の上昇は、さらに米国の農家を喜ばせ、在庫取り崩し策を推進したトランプ大統領をさらに支持するかもしれません。

 もともと、以下のとおり、大豆や小麦だけでなく、トウモロコシも、足元の価格は、リーマン・ショック(2008年9月)直後の安値にほど近く、比較的、割安感を感じやすい水準にあると、言えそうです。(大豆は8ドル、小麦は4ドル、トウモロコシは3ドル程度)

 サバクトビバッタの被害が拡大して、小麦の世界的な輸入量が増える、農家票を意識した策が講じられ米国の大豆在庫が減少するなどが、同時に発生すれば、小麦や大豆だけでなく、穀物全般が買われやすいムードが強まり、トウモロコシも反発色を強める可能性があります。

 穀物は、多くが、人間や人間が食す家畜が口にするものであるため、景気が悪化したとしても、一定量の消費を見込みやすい側面があります。

 一定量の消費があり、その上で、生産量が減少したり、政策的に在庫が減少したりした場合、かつ、価格が長期的視点において比較的、割安感を感じ安い水準にあるのであれば、“他の銘柄に比べて、長期的視点で”今後、価格反発が、起きやすいと、筆者は感じます。

 天候起因の急激な価格変動に留意しつつ、長期的な視点で、穀物価格を見守ることが、重要だと思います。

図:シカゴ大豆先物価格 単位:ドル/ブッシェル

出所:マーケットスピードⅡをもとに筆者作成

図:シカゴ小麦先物価格 単位:ドル/ブッシェル

出所:マーケットスピードⅡをもとに筆者作成

図:シカゴトウモロコシ先物価格 単位:ドル/ブッシェル

出所:マーケットスピードⅡをもとに筆者作成

[参考]穀物関連の具体的な投資商品

種類 コード/ティッカー 銘柄
国内株 8002 丸紅
海外ETF
JJG  iPath シリーズB ブルームバーグ穀物サブ指数
トータルリターンETN
外国株
ADM アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド
BG ブンゲ
商品先物 国内 トウモロコシ 大豆
海外 トウモロコシ 大豆 小麦 大豆粕 大豆油 もみ米