今週の見通し

 先述のとおり、先週は“総じて強い”週だったと言えると思います。

 原油は、4月20日(月)にマイナス価格をつけた後、反発色を強めています。今月(5月)から、OPECプラス(OPEC加盟国13カ国に、ロシアを含んだ10の非加盟国を加えた合計23の産油国の集団)の減産が始まったこと、米国が新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした経済活動の制限を一部解除したこと、などがその要因と報じられています。

 その他、5月6日(水)に公表された米国の週次ベースの原油在庫の増加幅が事前予想よりも小幅だった、海外通信社が月初に公表した、サウジの4月の原油生産量が、3月に同国が宣言した水準よりも少なかった、などの“予想よりも悪くなかった”複数の事象が、原油価格を支えている一因になっていると考えられます。

“予想よりも悪くなかった”ことが、価格上昇の一因になっているのは原油だけではありません。先述の米国の株価指数もその傾向があります。5月8日(金)に公表された4月の米国の雇用統計の内容が“予想よりも悪くなかった”ため、米国の株価指数が上昇したと報じられています。

 今週、欧米、日本などで3月と4月の、各国・地域の景況感に関わる経済指標が公表されます。3月と言えば、WHO(世界保健機関)が、新型コロナウイルスがパンデミック化したことを宣言した、同ウイルスのマイナスの影響が先進国の実体経済にダメージを与え始めた月です。

 今週公表される先進国の経済指標が“予想よりも悪くなかった”場合、株価や株価の上下で消費見通しが増減する傾向がある原油価格はどうなるでしょうか? 市場が、わずかなプラスの材料でも材料視をしたがる、今のような“いい所取り”の状況が続いていれば、“予想よりも悪くなければ”たとえ、絶対水準が悪くても、これらの価格は上昇する可能性があります。

 今週は、5月13日(水)に日本の3月の国際収支・貿易収支、英国の1月~3月期および3月のGDP(国内総生産)、3月の貿易収支、3月の鉱工業生産指数、3月の貿易収支、ユーロ圏の3月の鉱工業生産、ドイツの1月~3月期のGDP、ユーロ圏の3月の貿易収支、1月~3月期のGDP、米国の4月の小売売上高、4月の鉱工業生産、などが公表されます。

 事前予想との比較も重要ですが、長期的にはやはり“絶対水準”の議論はかかせません。仮にこれらの経済指標が、予想よりも悪くなく、“いい所取りで”株価や原油相場が上昇したとしても、安心せず、絶対水準を冷静に受け止めることが必要だと思います。

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