マーケットは、深さよりも早さが大事

 しかし、マーケットでは、雇用統計がどれだけ「悪い」かよりも、どれだけ「早く」回復するか、つまり深さから長さへと焦点が移っています。

 失業が経済に与えるダメージとは、需要ショックがそれだけ長引くリスクがあるということです。経済再起動に向けて動きだすためには、企業や消費者は経済成長を支える状態になっていなくてはいけない。失業率は企業や消費者の準備率を示しているともいえます。低くなるほど、経済再開に向けて準備が整っているといえます。

 その日に向けて米政府は、積極的な経済対策を打ち出しています。全国民を対象に現金給付を実施したほかに、外出禁止で働くことのできない労働者には、有給休暇という形で、1日当たり200ドル未満、または累計で1万ドルを上限に、10週間は3分の2の報酬をもらえる「Emergency Family and Medical Leave Expansion Act (EFMLEA)」、あるいは、1日当たり511ドル未満、または合計で5,110ドル未満を2週間もらえる「Emergency Paid Sick Leave Act(EPSLA)」を選択できるようにしました。さらに失業者に対しては、失業保険を週当たり600ドル、13週間までもらえるよう延長した法律もあります。

景気刺激策が経済再開を遅らせる?

 ところが、アメリカの失業給付金の規模が、経済の再起動をより困難にするかもしれないという新たな問題を生み出しています。州と連邦政府の給付金を合わせると、解雇された労働者に支払われる平均週額は、昨年末に労働局が発表した平均377.97ドルから978ドルに上昇するのです。これは多くの低賃金労働者が稼ぐ給料よりも多くなり、仕事に戻ることに消極的になる人が増えるおそれがあります。

 日本では、10万円の特別定額給付金に対して、少ない遅いと批判が噴出しています。日本政府が給付金を出し渋っていたのは、このような事態を予見していたから、ではもちろんないでしょう…。