投機筋(主に外国人)は先物売り建てを積み上げたまま

 詳しい説明は省略しますが、東京証券取引所が発表している裁定売買残高の変化に、投機筋の先物ポジションが表れています。4月10日時点で、裁定買い残5,725億円に対し、裁定売り残は2兆165億円と、売り残が買い残を大きく上回っている状態です。投機筋が、日経平均先物の売り建てを積み上げている状態と考えられます。

 簡単に、2008年以降の、裁定売買残高と日経平均の推移を振り返ります。

日経平均と裁定買い残・売り残の推移:2018年1月4日~2020年4月17日(裁定買い残・売り残は2020年4月10日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 上のグラフを見ていただくとわかる通り、裁定買い残高は、2018年初には3.4兆円もありました。この時は、「世界まるごと好景気」と言って良い状況でした。したがって、投機筋は世界景気敏感株である日本株に強気で、日経平均先物の買い建てを大量に保有していたことがわかります。

 ところが、2018年末にかけて、世界景気は急速に悪化しました。投機筋は、日経平均先物を売って、買い建て玉をどんどん減らしていきました。その結果、裁定買い残高は、2018年末には約6,000億円まで低下しました。

 2019年7月以降は、投機筋は先物買い建てを減らすだけでなく、先物売り建てを増やしていたことがわかります。それが、裁定売り残高の急増に表れています。2019年9月には、一時、裁定売り残が2兆円に達しました。

 ところが、2019年10-12月、日経平均は大きく上昇しています。米中貿易戦争が一時休戦となり、世界景気が回復する期待から、世界的に株が上昇した流れに乗りました。この時、裁定売り残高が急減しています。先物の売り建てを積み上げていた外国人投資家が、日経平均急上昇で損失が拡大するのを避けるため、必死に先物を買い戻していたことがわかります。このように、空売り筋の買い戻しを誘う上昇相場を、「踏み上げ」といいます。

 2020年に入ってから、情勢は急変しました。コロナ・ショックで、日経平均が暴落しました。投機筋は、そこで再び、先物の空売りを積み上げたことがわかります。裁定売り残は、再び2兆円まで増えています。3月20日以降、日経平均は急反発していますが、「踏み上げ」はまだ起こっていません。外国人の投機筋は、空売りを積み上げたままです。