今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「インド」を選択したお客様の割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、米国、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13カ国です。

図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「インド」を選択した人の割合 (2008年10月~2020年3月)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2020年3月の調査において、「インド」を選択した人の数は全回答者の17.61%でした。これは、2008年10月の統計開始以来、最も低い水準です。

 新型コロナウイルスの感染拡大による、世界経済の鈍化が、インド経済にダメージを与える可能性が生じ、それを嫌気して回答する人が減少した、と考えられます。

 もともとインドは同じ新興国の中国やロシアと異なり、先進国である米国や日本などと経済的・政治的に摩擦が生じることが少ない傾向がありました。米中貿易戦争が激化したり、米国がロシアに対して制裁を科したり、日中間で国民感情が高ぶることがあっても、比較的、インドは独立性を保ってきました。

 インドは(同じ新興国の大国である中国とロシアに比べれば)、先進国と一定の距離を保ってきたため、先進国起因の経済危機や、政治的な対立が発生したりしても、インドは大丈夫ではないか? インドは投資対象として選んでもよいのではないか? と考えられていた節があります。

 ただ、近年、国内の労働者から激しい反発が起きて余儀なくされたRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の離脱、そして、インド独自の文化が損なわれると抗議活動が起きた隣国から入国したヒンドゥー教徒、キリスト教徒らに市民権を与える市民権法の改正、パキスタン、中国との領有権争いの中で一方的に行ったカシミール併合など、国内外で大きな問題が起きています。

 また、内外の諸問題の他、自動車販売の記録的な落ち込みが目立ち、さらには先月後半から今月初旬にかけてインド国内で新型コロナウイルスの感染者が数千人単位に増加しており、インドは今、幾重にも困難が覆っています。

 次回の楽天DIの調査で、この低水準から脱することができるのか、注目したいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2020年3月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年3月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成