はじめに

 今回のアンケート調査は2020年3月30日(月)~4月1日(水)の期間で行われました。

 年度末となる3月末の日経平均株価は1万8,917円で取引を終えました。前月末終値(2万1,142円)からは2,225円安と大きなものとなり、2カ月連続で下げ幅が2,000円を超えたほか、月足ベースでも3カ月連続の下落でした。

 あらためて3月を振り返ると、新型肺炎ウイルスが引き続き影を落としました。月初の日経平均は2万1,000円台を意識したもみ合いではじまったものの、ウイルス感染拡大の勢いは止まらず、さらに原油安による影響も不安視されたことで、月の半ばは下げのピッチが早まり、1万6,000円台前半まで一気に株価水準を切り下げました。月末にかけては反発に転じる場面も見せましたが、日中の取引値幅が1,000円を超える日が続くなど値動きは荒く、月間を通じて不安定さが目立つ展開となりました。

 このような中で行われた今回のアンケートですが、5,000名を超える個人投資家からの回答を頂きました。日経平均のDIは前回と同様に株安の見通しが続き、為替については前回の円安見通しから円高見通しへと変化する結果となりました。

 次回も是非、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「見通しへの不安が続き、長期化を懸念」

 今回調査における日経平均の見通しDIの結果は、1カ月先がマイナス63.55、3カ月先はマイナス35.46となりました。

 前回調査の結果がそれぞれ67.13とマイナス29.04でしたので、数字の上では1カ月先が改善、3カ月先が悪化した格好ではありますが、両者ともマイナスの幅自体が大きいため、相場見通しに対する不安の根強さが続いていることに変わりはないと言えます。

 実際に、回答の内訳グラフを見ても、弱気派が1カ月先で7割近くであることや3カ月先でも半分を超えており、前回と比べて弱気派・強気派・中立派の勢力図はあまり変わっていません。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 ただし、前回の調査(2月25~27日)は日経平均が急落している最中で行われましたが、今回の調査(3月30~4月1日)については、日経平均が反発し、1万9,000円台まで戻していたタイミングだったことを考えると、あまり変わっていない勢力図の背後には、「目先の株価が反発していたとしても、底打ち感と先行きの不透明感が晴れるにはまだ時間がかかりそう」という心理が感じられます。

 また、足元の相場は「事象」「不安」「対応」の視点で捉える必要があります。つまり、新型コロナウイルスの感染拡大といった現在発生している「事象」に対して、景気減速や企業業績の悪化、信用リスク、社会生活といった「不安」が高まり、金融・財政政策などの「対応」がどこまで事象や不安にあらがえるかといった構図です。

 厄介なのはこの「事象」は現在進行形であるということと、「対応」に該当する新型コロナウイルス対策と財政・金融面を中心とする経済対策が打ち消し合う関係にあることです。新型コロナウイルス対策の強化はヒト・モノの動きを制限するため、経済活動を促す金融・財政政策の効果を抑制してしまいます。そのため、最近の「対応」はコロナウイルス対策をメインに据え、その期間の生活や社会保障をどう維持するのか、そしてウイルスが収束したあとに景気刺激策というのが議論の中心となっています。

 その一方で、これまでの株価急落によって、かなりの実体経済悪化への不安を先取りしてきたことも事実です。4月に入って発表された日銀短観や米雇用統計はさえない結果となりましたが、それに対する株式市場の初期反応は一応ネガティブではありながらも、3月の急落時に見せていたような値動きに比べると、その下げ幅は限定的にとどまっています。今後も経済指標や企業業績の発表が相次ぎますが、多少の悪化は「もう分かっていること」として、あまりインパクトを与えないのかもしれません。

 いずれにせよ、「事象」「不安」「対応」の掛け合わせが好転することや、「国内で緊急事態宣言が出される」、「延期されていた中国全人代の開催スケジュールが発表される」といった象徴的な材料の方が出てこないと、株式市場は動きづらく、一定のレンジ内でのもみ合いがしばらく続くというのがメインシナリオになりそうです。

今月の質問「どうなる?日本経済」

楽天証券経済研究所 根岸 美知代

【今月の質問1】「新型コロナウイルスの回復者数が、感染者数よりも大きくなるのは、いつ頃でしょう」

 WHO(世界保健機関)が発表している3月18日時点の新型コロナウイルスの世界の感染者数は、17万7,571人で、前日比+1万1,586人です。一方、回復者数は8万371人で、前日比+2,755人です。まだ、感染者数の増加が、回復者数の増加を上回っている状況です。そこで、感染者数の増加よりも、回復者数の増加の方が多くならない限り、コロナショックは、終息に向かわないと考えられます。回復者数が、感染者数よりも大きくなるのは、いつ頃でしょう。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 このアンケートが行われたのは、政府が緊急事態宣言を出す約一週間前の3月30日(月)~4月1日(水)でした。「新型コロナウイルスの回復者数が、感染者数よりも大きくなるのは、いつ頃でしょう」という質問に、「2020年7~9月」と考える方が最も多く、全体の41.4%でした。

 それくらい早期に世界全体で感染がピークアウトすると期待したいところです。ただ、4月8日時点では残念ながら、世界全体で感染拡大が加速しています。

 一筋の希望の灯は、中国や韓国で、新規感染者よりも回復者が多くなっていることです。早くから、強制力を伴う外出禁止令を徹底していた国・地域では感染鈍化が、はっきり表れています。

 一方、日本では4月7日、ついに政府が7都府県に緊急事態宣言を発令しました。これは、5月6日のゴールデンウィーク明けまで続く予定です。その頃に日本で回復者数が感染者数よりも大きくなることは可能でしょうか。そうなることを心から祈っています。

【今月の質問2】 新型コロナウイルスにより悪化した経済を回復させる為に、何をしたらよいと思いますか。(複数回答可)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 全体の48.3%の方が「消費税引き下げ」が必要と思っていることが分かりました。続いて、「所得減税」40.3%、「世界各国協調の、利下げ・金融緩和拡大」37.6%、「公共投資拡大」22.1%、「その他」15.6%という結果でした。「その他」のご意見で多かったのは、「現金給付」244名、「ワクチンの早期開発」113名、「法人税、相続税、固定資産税等の減税」53名でした。他に「中小企業の支援」「ベーシックインカム」などのご意見もありました。

 今回もたくさんのご意見をありがとうございました。

為替DI:新型コロナ不安 投資家は円高を予想

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

「4月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」

 楽天証券が3月末に実施したアンケートにご回答頂いた5,054名のうち、全体の半数を超える2,552名(約51%)が「円高に動く」と考えていることが分かりました。

 一方、1,110名(約21%)は「円安に動く」と考えています。「動かない(分からない)」は1,392名(約28%)。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 DI(円安見通しから円高見通しを引いたもの)は▲28.53で2カ月ぶりのマイナスになりました。

 BLS(米労働省労働統計局)が4月3日に発表した3月の米雇用統計は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で悪化するとは伝えられていましたが、結果は予想をはるかに超える「ひどい」ものでした。

 非農業部門雇用者数は▲70.1万人(予想▲10.0万人、前回+27.5万人)と2010年9月以来9年半ぶりのマイナス。失業率は4.4%に急上昇(予想3.8%、前回3.5%)。なかでも飲食産業は特に影響が大きく、就業者が41万人も一気に減りました。

 予想と結果のズレは、たいした問題ではありません。今では雇用統計を含めあらゆる経済指標が「予想不能」な状態だからです。そもそも、データを集計して発表する人が会社に来ることができないのですから。

 今回の雇用統計は、新型コロナウイルスが米国で流行しはじめた、3月中旬のデータが中心。ロックダウンが本格的に始まったのはその翌週からです。確実にいえるのは、来月の雇用統計が今月より悪くなるということです。データ集計作業ができずに発表が中止になる可能性さえいわれています。ブラード・セントルイス連銀総裁は、4-6月期の失業率は30%まで悪化する可能性があると警告しています。

 3月のユーロ/円の終値は1ユーロ=118.64円。2月の終値に比べて0.56円のユーロ安/円高でした。

 楽天証券が3月末に実施したアンケートにご回答頂いた5,054名のうち、全体の半数を超える2,825名(約56%)が、4月のユーロ/円は「ユーロ安/円高に動く」と考えています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 一方「ユーロ高/円安に動く」は606名(約12%)しかいませんでした。「動かない(分からない)」は1,623名(約32%)。

 ユーロ/円のDI(円安見通しから円高見通しを引いたもの)は▲43.91で2カ月ぶりのマイナスになりました。

 3月の豪ドル/円の終値は1豪ドル=66.03円。2月の終値に比べて4.28円の豪ドル安/円高でした。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 楽天証券のアンケートにご回答頂いた5,054名のうち、2,250名(約44%)が4月の豪ドル/円は「豪ドル安/円高に動く」と考えています。

 一方「豪ドル高/円安に動く」は702名(約14%)でした。「動かない(分からない)」は2,102名(約42%)。

 豪ドル/円のDI(円安見通しから円高見通しを引いたもの)は▲30.63で2カ月ぶりのマイナスになりました。

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「インド」を選択したお客様の割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、米国、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13カ国です。

図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「インド」を選択した人の割合 (2008年10月~2020年3月)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 2020年3月の調査において、「インド」を選択した人の数は全回答者の17.61%でした。これは、2008年10月の統計開始以来、最も低い水準です。

 新型コロナウイルスの感染拡大による、世界経済の鈍化が、インド経済にダメージを与える可能性が生じ、それを嫌気して回答する人が減少した、と考えられます。

 もともとインドは同じ新興国の中国やロシアと異なり、先進国である米国や日本などと経済的・政治的に摩擦が生じることが少ない傾向がありました。米中貿易戦争が激化したり、米国がロシアに対して制裁を科したり、日中間で国民感情が高ぶることがあっても、比較的、インドは独立性を保ってきました。

 インドは(同じ新興国の大国である中国とロシアに比べれば)、先進国と一定の距離を保ってきたため、先進国起因の経済危機や、政治的な対立が発生したりしても、インドは大丈夫ではないか? インドは投資対象として選んでもよいのではないか? と考えられていた節があります。

 ただ、近年、国内の労働者から激しい反発が起きて余儀なくされたRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の離脱、そして、インド独自の文化が損なわれると抗議活動が起きた隣国から入国したヒンドゥー教徒、キリスト教徒らに市民権を与える市民権法の改正、パキスタン、中国との領有権争いの中で一方的に行ったカシミール併合など、国内外で大きな問題が起きています。

 また、内外の諸問題の他、自動車販売の記録的な落ち込みが目立ち、さらには先月後半から今月初旬にかけてインド国内で新型コロナウイルスの感染者が数千人単位に増加しており、インドは今、幾重にも困難が覆っています。

 次回の楽天DIの調査で、この低水準から脱することができるのか、注目したいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2020年3月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年3月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成