厚生労働省が3月末に発表した賃金構造基本統計調査によると、2019年の40歳男性の賃金が10年前の40歳に比べ、明確に下がっている。賃金制度が変わったわけではなく、課長や部長などのポストを中高年と女性に奪われたからである。
中堅層(就職氷河期世代)の賃金減少が非常に厳しい状況にある。資産形成どころの話ではない。米国では、国民の6割はいざという時の銀行預金残高は400ドル以下である。4割の人は家も資産も持っていない。今後、世界的に家計の債務が大きな社会問題として浮上してくるだろう。
「新型コロナウイルス感染症の拡大で各国が都市封鎖(ロックダウン)を強いられる中、雇用の担い手である中小企業のオーナーは悲惨な状況に置かれ、失業率が跳ね上がっている。アナリストらは47兆ドル(約5000兆円)と記録的水準に積み上がった世界の家計債務にデフォルト(債務不履行)が広がり始めるのは時間の問題だと警鐘を鳴らしている」(4月6日 ブルームバーグ「世界の家計債務、不穏な5000兆円 アナリストがデフォルト拡散警鐘」)
住宅ローンを持っている米国人の約30%(約1,500万世帯)は支払いを停止する可能性がある
米国人の退職貯蓄パターン 米国人の3人に1人が退職時の貯蓄ゼロ
今回の資産価格の急落は、金融機関の信用不安を促すだろう。FRB(米連邦準備制度理事会)の無制限QE(量的緩和)で隠れているが、金融機関のバランスシートは相当傷んでいるはずだ。金融機関はもう融資しないから、貸し渋りで信用収縮が起こる。
相場が2番底、3番底を形成するのはバブル崩壊パターンを考えると必然である。エントロピーの法則ではないが、「事はよくなる前に悪化する」のである。米国もおそらく最終的にはリーマン・ショックと同レベルの50%超の下げ相場が到来する可能性も否定できない。危機管理とは「ワーストケースのシナリオを想定しておく」ことである。決して、そうなるとあおっているわけではない。
NYダウ(月足)リーマン・ショック時のチャートと下落率