<質問7>相場にどう臨むべきですか

 不安は大きいでしょう。しかし、株式相場は既に割安領域に入っています。投資余力のある人には、買い場の到来です。景気後退など一段安のリスクはあっても、1~2年の時間軸では、新型コロナウイルスは終息し、経済も正常化するとの見方は妥当でしょう。

 基本アプローチは、バリュー投資とモメンタム投資です(図8)。バリュー投資では、既に上値から3割ほど下落した株式指数を、時間分散で購入します。相場が数カ月~1年もたついても、数年後には良好な結果をもたらす可能性が高いと判断します。モメンタム投資は、好景気に沿って相場に乗るアプローチです。新たな上方サイクルの兆候の確認はまだ先であり、2021年にずれ込むかもしれません。時間分散のバリュー投資で基礎ポジションを作り、追い風を確認したらモメンタム投資を上乗せする流れを考えています。

図8:サイクル投資の基本

出所:田中泰輔リサーチ作成

 大きな投資ポジションを残したまま今回の下げに直面した投資家の選択肢は、(1)保有し続けるか、(2)リスク圧縮か(売るかヘッジか)、(3)買い増すか。私も損失を抱えて胃に潰瘍ができるストレスに悩まされた経験があります。あえて気休めは申しません。冒頭に紹介した救助隊よろしく、置かれた状況下で可能な行動メニューを淡々と判断するのみです。(1)は忍耐を強いられ、(2)は減少した含み益の実現か損失計上かの難しい判断を迫られます。ご一考いただきたいのは、不安定な相場はまだ続くにしても、余力を残す投資家には買い場領域に入りつつあることです。(3)の難平(ナンピン)買いは、相場リスクが高まったときにリスクを上積みする行為であり、一般論として推奨できません。

 今回の相場下落は、新型コロナウイルスという特殊要因がきっかけとはいえ、長く続いた相場は自ら反落圧力を強めることの教訓は共通です。特に円ベース投資家は、サイクル変動の影響を強く受けがちであり、買い方以上に、売り逃げ方が投資の肝と考えています。今回多くの方が「長期+分散+積み立て」投資のリスクも痛感しているでしょう。しかも、「お任せ投資」ではリスクに対する感性も対応力も育ちません。現在の悩ましく苦しい経験から、将来につながる前向きな教訓が得られればと願っています。

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