<質問5>世界、日本の経済はどうなりますか
新型コロナウイルス問題が出た当初、短期の感染終息なら、経済も相場もV字回復との楽観が優勢でした。しかし、欧米に感染が広がり、感染終息が遅れるほど、回復過程はU字の底を長くする恐れを強めています。最悪な事態は企業倒産、雇用悪化が広がることでしょう。経済の回復メカニズムそのものが働きにくくなり、深い景気後退リスクを排除できなくなります。目ぼしい政策を総動員し、有効な追加策が乏しいことは、さらに痛手となるでしょう。
リーマン・ショック級の危機という声もよく耳にするようになりました。ただし根本的な相違点が多々あります。リーマン・ショック時に深刻だったのは、金融機関や機関投資家の過剰かつ複雑なポジションでした。企業部門は比較的健全で、積極的な金融・財政政策にポジティブに反応し、景気に先行する株式市場もいち早く急反発しました。
しかし今回、現時点では、金融機関ではなく、リーマン・ショック後の低金利環境で債務を積み上げた企業部門が懸念されます。また、先進国経済の底堅さを支え続けた非製造業の景況悪化が危惧されます。新型コロナウイルス感染が続く間、企業は活動の自粛、停止を継続せざるを得ず、金融財政政策の効果も現れにくい、かつてない事態に直面しようとしています。
日本は、欧米より深刻なダメージを受ける可能性があります。なぜなら、2019年10月の消費税増税以降の景気減速に新型コロナウイルス問題が重なり、新型コロナウイルスの発生源である中国に近い分、同国の経済悪化、サプライチェーン分断の影響が厳しく押しかかっています。金融財政政策の発動余地は欧米より乏しいと言わざるを得ません。東京五輪が延期されることになった場合もダメージです。「リスクオフで円高」が進み、日本株がさらに圧迫される場合、日本は一段と割を食う恐れがあります。