<質問2>なぜ相場は突然暗転したのですか

 相場の暗転を招いたのが新型コロナウイルスであることは言うまでもありません。ただしこれほどの下落は、相場自体の反落の下地との相乗作用でしょう。

 米景気拡大サイクルは11年続き、株価もこれに沿って大トレンドを形成しました。この間の低インフレで低金利、米IT(情報技術)プラットフォーマーの躍進で、この大トレンドは一段の高みに至りました。

 2018年後半から私が警戒したのは、米景気は既に終盤にあり、金利上昇や景気指標の陰りに株価が先行的に反応しやすくなること、そして、相場の大トレンドで投資ポジションの含み益膨張という、相場自らが反落の内部圧力を溜めていることでした。もっとも、通常、相場暗転をピンポイントで予想することはほぼ不可能。このため、景気終盤入りの兆しを見たら、投資ポジションを漸次(ぜんじ)減らすことが鉄則です。

 今回、事前のリスクオン機運がアダとなった投資家が少なくないでしょう。米国では2019年第4四半期には、利下げ、トランプ政権の米中摩擦棚上げ、半導体市況回復を受けて、景気も株価も2020年にかけて上昇サイクルを永らえると期待されました(図3)。降って湧いた災難の新型コロナウイルス問題は、株式相場への悪影響の事前判定が困難で、むしろSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の例から早期収束で買い場かという楽観が勝りました。その分、相場暗転の落差がより強く現れることにもなりました。

図3:米国景気の10年サイクルとミニサイクル

出所:Bloomberg Finance L.P.より田中泰輔リサーチ作成