<質問4>金融財政政策は効かないのですか
新型コロナウイルスショックへの緊急対応として、FRB(米連邦準備制度理事会)は0.5%、1.0%の緊急利下げ、量的緩和再開を決めました。トランプ米大統領は、連邦政府の歳入の3分の1を占める給与税の免除案を表明しました。主要中央銀行は十分なドル供給を申し合わせ、日本銀行はETF(上場投資信託)購入枠12兆円への倍増を決定しました。まさに政策総動員です。しかし、株式市場は一段と下落しています。効果はないのでしょうか。
政策のインパクトを、(1)初期消火、(2)延焼阻止、(3)鎮火後の再建、に分けて考えます。今回はまず(1)に効くかどうかがポイントです。売りが売りを呼ぶパニック心理にバケツで水をかけ、いったん足を止めさせる初期消火(といっても、既に火は相当大きいですが)に失敗すると、被害は桁違いに大きくなります。
今回の金融政策は相場の側面支援になる一方、(2)の延焼阻止、すなわち新型コロナウイルス感染抑制には関わりがありません。欧米の感染が広がる限り、その経済指標がとっぴに下振れるなどする間、市場が平静を保つのは困難です。不安が再燃すると、政策総動員が逆に、残された政策の乏しさへの懸念を招き、失望売りの材料に転じかねません。
これら危機対策は、平時なら経済にとって過剰な刺激策です。早期に感染終息となれば、(3)の再建を(むしろ加熱が心配なほど)強力に促すでしょう。しかしそれも、(1)初期消火、(2)延焼阻止があればこそ。焦点は引き続き欧米の感染状況です(図5)。
図5:中国以外で新型コロナウイルス感染拡大