相場で最も重要なルールは防御である

 米著名投資家ポール・チューダー・ジョーンズの運用の特徴は<徹底したリスク管理>にある。彼は、「私は失うことを前提に考える。獲得することに夢中になるのではなく保護することを第一に考える。最も重要なルールは攻撃ではなく防御である。どのリスクポイントで自分は撤退するのかを把握しておかなければならない。私は1カ月あたりの損失率を絶対2ケタにしない」と、発言している。

 相場はトレンド期が少なく、保ち合い相場やランダム相場のなかでは平均回帰という現象が起こってストップロス注文をいれなくても相場が戻って助かってしまうことも多いので、ほとんどの市場参加者はストップロス注文を置かない。

 ストップロス注文を置かなくても助かってしまうということを繰り返していると、レバレッジのかかった取引では<3年から10年に1回の大きな下げ局面>で証拠金の多くを失うことになるだろう。現物取引の場合でもポジションが塩漬けになる。いずれにせよ、「何もできず見ているだけ」という塩漬けの状態になり、<投資効率>が死んでしまう。

 ポール・チューダー・ジョーンズが言うように、「どのリスクポイントで自分は撤退するのかを把握しておかなければならない」のである。

 どのリスクポイントで自分は撤退するのかという問題を解決するために、筆者は相場のチャートの上下にストップロスラインというのを引いている。これでとりあえず相場から撤退するポイントは把握できる。

ドル/円(日足)とトレーリングストップロスライン(緑)

出所:石原順

  筆者にとって重要なのが、トレーリングストップラインによる「強制利食い」(損切りになることもある)である。トレーリングストップラインによって、ストップロスポイント(ストップロス幅)まで待つことなく素早く相場から撤退できる。

 相場に絶対はない。上記のチャートはあくまでストップロス注文とトレーリングストップの考え方を提示しているだけである。しかし、相場を長期に続けていくためには、こうした「生き延びるためのデザイン」が必要であろう。