各候補者の公約

 では、民主党の有力候補がこれらの問題に対してどのような公約をしているのかを下の表にまとめました。

争点 サンダース氏 バイデン氏 ブルームバーグ氏 ウォーレン氏 ブテジェッジ氏
医療 国民皆医療保険 ACA拡充 ACA拡充 国民皆医療保険、薬品は政府が製造 ACA全体的な見直し
銃規制 買戻しプログラム   自動小銃禁止、バックグラウンドチェック義務付け 規制賛成 買戻しプログラムを支持
教育 大学無料化 大学2年間無料化 チャータースクールを支持 スチューデントローン一部帳消し 営利チャータースクールに反対、スチューデントローン一部帳消し
経済 GAFA分割     グラススティーガル復活、GAFA分割  
気象
変動
シェール禁止 排ガス課税     排ガス課税
格差 社会プログラム新設     社会プログラム新設 労働者に投資、過疎地に投資
連邦
債務
防衛予算削減 防衛予算増額   防衛予算削減  
税金 裕福層特別税 キャピタルゲイン・法人・裕福層増税 キャピタルゲイン増税、法人税率は引き上げるが2017年以前よりは低く抑える、裕福層への税金を新設 キャピタルゲイン・法人税・裕福層、ウォール街増税 2017年のトランプ法人減税を止める、裕福層への課税強化

 少し解説を加えると、「国民皆医療保険」というのはカナダやフランスの医療制度のように国民全員が医療保険に加入できる制度を指します。現在の米国では企業が医療保険を提供する、ないしは個人が医療保険を購入する制度になっています。低所得者にはメディケイド、高齢者にはメディケアという医療保険制度が適用されます。

 ACAとは2010年に成立したAffordable Care Actの略で、いわゆる「オバマケア」の発展したものだと考えてください。これは今まで貧困層ではないけれど医療保険が高すぎて加入できなかった人たちも医療保険に加入できるよう、廉価なプランを用意する意図で始められました。

 サンダース、ウォーレン両候補は国民皆医療保険を主張していますが、それをどうやって実現するかについて具体性に乏しく、しばしば批判の対象となっています。とりわけ既往症のある国民の扱いをどうするか? という問題はプログラム全体のコストや負担の分担にかかわる、やっかいな問題となっています。

 銃規制の問題に関しては、米国ではたびたび連続発砲事件が起こっており、とりわけ一度にたくさんの人を攻撃できるアサルトライフル(自動小銃)の規制が焦点となっています。

 米国にはNRA(全米ライフル協会)と呼ばれる圧力団体があり、ロビー活動を行っています。その関係で銃を巡る悲劇的事件が相次いで起こっているにもかかわらず、その規制がなかなか進んでいないのです。

 チャータースクールとは小中学生の子供を持つ親が、普通の公立小中学校の教育に飽き足らず、有志を募って始める新しい学校を指します。一定の基準を満たせば「準公立」として公的な資金援助も受けることができます。ITなど、普通の公立小中学校ではなかなか高水準のトレーニングを授けることが難しい専門領域に特色を持つ、チャータースクールが多いです。

 ただ、コミュニティーにチャータースクールができると、そこが磁石のように優秀な生徒を惹きつけてしまうことで、従来の公立小中学校の生徒が減り、結果として教育の質が低下し、格差が助長されるという考えから、チャータースクールに反対の人たちもいます。

 GAFAはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの略ですが、民主党の大統領候補の中には「これらの企業は大きくなり過ぎており、独占的な支配力を持ち始めている」と考えている人がいます。

 そこで昔、スタンダード石油やAT&Tなどの巨大企業が分割を命令されたのと同様に、反トラスト法でこれらの企業をバラバラにしようというムードがあるわけです。