米大手金融機関が減少するとした“日量26万バレル”は世界の石油消費量の0.26%

 下落した銘柄の中でも、原油の下落率が大きくなっています。1月22日に、米大手金融機関が同ウイルスの拡大が世界の石油消費量を減少させる懸念があると具体的な数量を示した上で指摘をしたことが、下落に拍車をかけたとみられます。

図:WTI原油価格の推移 単位:ドル/バレル

出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)のデータをもとに筆者作成

 

 実際に、米大手金融機関が減少すると指摘した“日量26万バレル”の世界の石油消費は、どの程度の規模なのでしょうか?

図:世界の石油消費量と石油の需給バランス(年平均)

単位:百万バレル/日量
出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータをもとに筆者作成

 

 上図の通り、EIA(米エネルギー情報局)が今月公表した統計によれば、2019年の世界の石油消費量は日量1億80万バレルでした。また、供給量から消費量を差し引いた需給バランスは日量3万バレルの供給不足でした。

 これらの値に、米大手金融機関が今回の新型コロナウイルスの拡大によって消費が減少すると指摘した量、“日量26万バレル”を当てはめると、世界の石油消費量は2019年に比べて0.26%減少し、石油の需給バランスは同日量23万バレル供給過剰になると考えられます。

 消費量においては0.26%の減少は、需給バランスにおいても供給過剰とはいえ、2018年が日量91万バレルの供給過剰だったことから考えれば、小さい規模であると言えます。

(1)過敏にならざるを得ない世界的な感染症がテーマで、(2)米大手金融機関がまことしやかに、(3)消費が減る話をする、などの条件がそろったため、原油市場は(特に原油を生産しない先進国の市場で)過剰に反応してしまっているようにみえます。

 米大手金融機関の指摘が、下落に拍車をかける複数の条件を含んでいたため、原油価格は他の主要銘柄と比較しても、大きな下落になったのだと考えられます。