応用を考えるとすれば

 具体的な応用方法としては、この方法で、株価の上限(リスク・プレミアムが5%)を超えたら株式への投資を減らすことを考えてもいいし、下限(リスク・プレミアムが7%)を下回るようなら株式投資額を増やすことを考えてもいいかな、というヒントだというくらいに考えておくのがいいだろう。

「判断が難しい」ということと、「判断が全く有効でない」ということとは、完全に同一ではない。また、市場に参加する投資家として、株価に対するある程度の判断基準を持つことは「望ましい」ことだし、「自分にとって有益」でもある。また、市場の変動についても、これを「忘れておく」のではなく、「よく見ていながら冷静である」という状態が望ましい。

 株価の高安に関する評価尺度には「PBR(株価純資産倍率)」や「配当利回り」など、他にもポピュラーなものがあるし、分析者によってさまざまな方法がある。これらも、補助的に判断に使えるだろう。

 株価判断の尺度については凝り出すときりがないが、今回ご紹介した、利益と株価の関係を中心に見て、「益利回り」「長期金利」そして「名目GDP成長率」の関係を見る方法は、大雑把だが、それなりに参考になる方法かと思う。

【補足】

 リーマン・ショック後の日経平均が8,000円台の頃の原稿ですね。我ながら懐かしい。長期金利=名目GDP成長率を仮定すると、「(たとえばS&P500で)PER20倍は割高」といった伝統的な常識と合致する判断方法かと思います。大まかに言ってPER14.3倍(リスクプレミアム7%)を下回ると割安で、20倍(同5%)を上回ると割高、といった判断を、長期金利と名目GDPの水準で調整するものです。2008年当時は長期金利がある程度自然に動いていましたが、現在の環境では、長期金利が日銀によって誘導されているので、状況が異なります。今は、直接的には使えない判断方法だと考えておくべきでしょう。(2020.1.17 山崎元)