リスク・プレミアムに関する補足

 株式投資のリスク・プレミアムの大きさについては、学者の間でも論争があって確定した定説はないが、海外のある論文によると学者にアンケートを採ったところ「きっと、これくらいだろう」というレベルの平均値が約5%、「学生にはこれくらいを求めることを勧めたい」というレベルで6%という水準だった。「6%が標準」という基準の決め方は、株価に対してやや厳しい保守的な基準だと言ってよい。

 個人投資家の場合、現実に投資を行う際には金融商品の手数料や税金がかかるので、いくらか厳しく見積もっておくことが適当だろう。

 時々の株価が企業の利益に対して高いか・安いかを判断するもっと手軽な方法としては、日経新聞の先ほどのページにある「株式益利回り(%)」を見て、これを長期金利と比べる方法がある。

 11月1日の朝刊で「予想」利益ベースのこの数字を見ると7.76%だった。これは、日経平均ではなくて、東証1部上場銘柄全体の平均だ。これと長期金利の1.48%とを比べると、その差は6.28%だ。これに名目GDP成長率としてイメージされる数字を加えると、それがリスク・プレミアムの数字になる。名目成長率が0.3%だとすると6.58%となるから、株価は「標準よりも安いが、下限よりは高い」というくらいだと考えられる。

 仮に長期金利が0%だとして、益利回り5%と7%をそれぞれ株価収益率に置き換えると20倍と14.29倍だ。この方法では、「まあまあ適正」と考える株価には随分幅があることになるが、株価というものは割合いい加減なものだ。はっきり言って、利益予想も曖昧(あいまい)だし、環境による変化も大きい。計算のインプット自体が曖昧なので、アウトプットを厳密に計算しようとすること自体が無理だ。

 なお、近年の行動経済学の研究によると、投資家が要求し予想するリスク・プレミアムは、直近の経験の影響を強く受けるという。サブプライム問題で株価が大幅に下落したことが、世界の投資家にリスク・プレミアム拡大的に働く可能性が大きい。