今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している設問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「中国」、と回答したお客様の割合に注目します。

 当該設問は複数回答可で、選択肢は、日本、米国、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になしの13個です。

図:設問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「中国」を選択した人の割合 (2009年1月~2019年12月)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 当該設問で「中国」を選択した人の割合は、2009年中頃、60%前後でした(2009年4月の62%が最高)。割合が60%だとして、回答者数が今回のアンケート調査と同じ3,504名だった場合、2,100名を超える人達が「中国」を選択した計算になります。

 楽天DIの調査結果は、たくさんの個人投資家の皆様の考えや思いが凝縮された、他にはない、貴重で膨大なデータだと筆者は考えています。そのようなデータにおいて、60%以上の数値が出た回答については、個人投資家の皆様の総意と言っても過言ではありません。

 その意味では、今からおよそ11年前、「中国」が、今後投資してみたい国(地域)にふさわしい、ということは個人投資家の皆様の総意だったと言えます。

 その後、「中国」の割合は低下の一途をたどります。2016年頃からは横ばいになり、下げ止まったように見えますが、3%から10%で推移する程度で、個人投資家の皆様の総意とは言えない状態になっています。

 この低下・低迷の背景には何が挙げられるのでしょうか。筆者は、グラフに書いた、中国のGDP成長率の推移が挙げられると考えています。

 GDPは、その国が生み出すモノやサービスの価値を示す“国内総生産”のことで、個人投資家の皆様の多くは、景気動向に密接にかかわる指標と理解されていると思います。GDP成長率が高い時は、その国の経済は好調を維持し、投資をするのに適した状況と言えます。

 しかし、逆に、GDP成長率が低い時は、経済は停滞気味で、投資をしても大きなリターンが得にくい状況と言えます。中国のGDP成長率が低下・低迷したことが、個人投資家の皆様の間で、中国を今後投資してみたい国(地域)に選ぶのを手控えさせたのだと思います。

 また、GDP成長率が低下したことだけでなく、しばしば、中国が公表する統計が実態を反映していない可能性があると報じられ、本当は、中国の経済情勢は数字が示す状況よりも悪いのではないか? という懸念が生じたことも、中国への投資意欲が減退する要因になった可能性があります。

 今後、米中貿易戦争の渦中にある中国が、米国との貿易交渉で、これまで引き上げ合戦をしてきた関税を引き下げたり、不買を行ってきた特定品目の貿易を再開したり、特定企業への制裁を緩和したりするなど、米中間で合意を重ね、経済の回復が目立ってくれば、GDP成長率、引いては当該設問における「中国」の割合が向上する期待が生じると思います。

 引き続き、設問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「中国」と回答した人の割合に注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2019年12月調査時点 (複数回答可)

投資対象 割合 前回比
国内株式 54.00% ▲ 1.61%
外国株式 40.72% + 2.71%
投資信託 45.46% + 10.64%
ETF 30.54% + 7.19%
REIT 16.30% + 0.27%
国内債券 5.85% + 0.01%
海外債券 8.19% +0.43%
FX(外国為替証拠金取引) 8.96% +0.13%
金やプラチナ地金 13.36% + 1.63%
金先物取引 1.86% + 0.14%
原油先物取引 1.43% +0.30%
その他の商品先物 1.06% ▲ 0.22%
特になし 6.11% ▲ 3.19%
出所:楽天DIのデータより筆者作成

 表:今後、投資してみたい国(地域) 2019年12月調査時点 (複数回答可)

国名 割合 前回比
日本 32.71% ▲ 0.60%
アメリカ 59.56% + 7.49%
ユーロ圏 5.51% + 1.72%
オセアニア 4.85% + 1.01%
中国 10.39% + 2.09%
ブラジル 3.57% ▲ 0.02%
ロシア 2.68% + 0.48%
インド 28.88% + 0.82%
東南アジア 24.51% ▲ 0.29%
中南米(ブラジル除く) 2.48% ▲ 0.00%
東欧 1.94% + 0.17%
アフリカ 6.59% ▲ 0.91%
特になし 8.19% ▲ 2.05%
出所:楽天DIのデータより筆者作成