テーマ6:世界を分断する米中システム

 中国は、西側にすり寄る姿勢を後退させ、独自システムの強化へ重心を移す姿勢が見受けられます。世界は米中システムが分断的に並存する時代へ進む可能性があります。

 中国は西側に倣(なら)って国際化、市場化へと規制緩和を進めたところ、2015年に国内資金の大規模な海外流出が起こり、肝を冷やしました。その後、資本規制が再強化され、中国元(人民元)は国際通貨になってドル覇権に挑むどころか、国内通貨に逆戻りしています。為替取引シェアはドル88.3%に対し、人民元は4.3%(ドル/円のようにペアで集計されて合計200%、2019年4月、図4)。外貨準備の通貨別シェアもドル57.9%、ユーロ19.1%、円5.1%に対して、人民元はわずか1.9%です(2019年9月末、図5)。

図4:世界外為取引の通貨別シェア(2019年4月中)

出所:BIS(国際決済銀行)

図5:世界外貨準備の通貨別シェア(2019年9月末)

出所:IMF

  習近平体制第2期の2017年あたりから、市場の荒波を避け、国家の監視による独自システムに向かう意向を見せています。米国の情報覇権から離れたネットの構築に加え、2020年中にもデジタル人民元を導入するとの観測があります。自由主義国では、中国当局に補足される同国情報システムやデジタル人民元の利用は広がらないでしょう。しかし、他の独裁国、金融未開国、一帯一路周辺国、アフリカ・アジア・中南米諸国では受け入れられる目があります。2020年代に米国の情報覇権、ドル覇権が取って代わられるとは想定しないものの、中国が部分的に侵食する可能性は大です。米国が英国のEU離脱を強く支持する理由を、米英連合による情報・金融システム強化という文脈で見ることも、そう穿(うが)ち過ぎではないと考えています。