4.5G関連銘柄
表2 5G関連銘柄
表2は、主な5G関連銘柄の一覧表です。主な分野の今後を見ていきたいと思います。
1)半導体
5Gを実現するには、最高の性能を持った5G用CPUまたはチップセットと5Gモデムが必要になります。5G関連の筆頭は、5Gを実現する超高性能半導体(CPU、チップセットとモデム)を開発するクアルコムや生産するTSMCのようなファウンドリー(半導体受託製造業者)あるいは大手半導体メーカーと言ってよいと思われます。
CPUが高性能化する場合、DRAM、NAND型フラッシュメモリーも高速化、大容量化が進むと思われます。4K動画、その次には8K動画をスマホユーザーが大量にSNSにアップしたり、お互いにやり取りすることが増えると思われます。そのため、データセンター投資が再び活発になると予想されます。サムスン、マイクロン(いずれもDRAM、NANDメーカー)、キオクシア(旧東芝メモリ、NAND)も5Gの恩恵を受けると思われます。
また、スマホユーザーがスマホを遊びに使う場合、カメラを使うことが多いです。4K、8Kが大量に送信できるとなれば、より一層のカメラの高性能化、すなわち、カメラの多眼化、イメージセンサーの大判化が進むと思われます。イメージセンサーの世界シェアトップのソニーへの恩恵は大きいと思われます。
表3は、5G用チップセットと5Gモデムの製品の一覧です。特に世界最大の通信用半導体メーカー、クアルコムが積極的な製品投入を行っています。2020年9月に発売されると思われるアップルの新型iPhoneには、TSMCが生産する5ナノCPUが搭載され、5Gモデムはクアルコムが供給することになります。この5Gモデムが、クアルコムの最新5Gモデム「X55」(受信最大7Gbps、送信最大3Gbps。サブ6(6GHz未満)とミリ波に対応。7ナノ。生産はTSMC)になるのか、あるいは未発表の新型5Gになるのか不明です。
いずれにせよ、5ナノ×5GでiPhone2020年モデルは相当な高性能となることが予想されます。これに対して、他のスマホメーカーは新型iPhoneが発売される前にできるだけ5Gスマホを売ろうとすると思われます。一定の市場シェアと2~3年後に期待される買い替え需要を獲得するためです。しかも、世界で最もスマホ需要が大きい中国では、11月1日の5Gサービス開始時に約1,000万人の予約を集めるという幸先良い出だしとなっています。
スマートフォン市場は、2017年から(四半期ベースでは2017年10-12月期から)マイナス成長に陥っていましたが、2019年7-9月期に前年比が横ばいとなり下げ止まりました。今後は5Gスマホをけん引役として年率5~10%成長が3年程度続く可能性があります。5Gスマホの需要が好調でスマホメーカーの販売意欲が強いことが相まって、スマホ市場はしばらく安定成長が続く可能性があります。
グラフ1はスマートフォン出荷台数の長期予測の一つであり、2020年の5Gスマホ出荷台数予想が1億6,400万台となっていますが、実勢では2億~3億台の間になる可能性があります。そして、2021年、2022年もスマホ市場の回復が続くと予想されます。
このことは、5G半導体(チップセットとモデム)、メモリ(DRAMとNAND)、スマホ用電子部品、そして高性能半導体を作るための半導体製造装置の需要にプラスの影響を与えると思われます。
表3 5Gスマートフォン用チップセットと5Gモデム
表4 iPhoneのカメラ画素数、CPU、通信の技術進歩
グラフ1 世界のスマートフォン出荷台数予測
表5 スマートフォンのメーカー別出荷台数と世界シェア
2)半導体製造装置
5Gスマホに搭載する超高性能半導体を生産するには、超高性能半導体製造装置が必要になります。日本のメーカーでは、アドバンテスト(5G半導体用テスター)、東京エレクトロン(前工程製造装置)、レーザーテック(EUV用マスク欠陥検査装置)、SCREENホールディングス(ウェハ洗浄装置)、ディスコ(半導体チップを切り出すダイサ、ウェハの底面を削るグラインダ)の5社が注目されます。
半導体設備投資の動きに関しては、世界最大の半導体受託製造業者、台湾のTSMCの2019年7-9月期決算がサプライズでした。業績が順調なのもさることながら、2019年12月期の設備投資見通しを、年初の100億ドル(約1兆1,000億円)から150億ドル(約1兆6,000億円)に上方修正しました。
理由は、最新鋭の7ナノラインと来年から稼働開始する予定の5ナノラインへの設備投資の上乗せです。7ナノラインがスマホメーカーからの5G用チップセット、5Gモデムの注文で一杯になっているもようであり、増産投資が必要になっています。また、2020年9月に発売されると思われる新型iPhoneはTSMCが生産する5ナノCPUを最初に搭載することになると思われますが、これまでの例では3~6カ月で他の大手スマホメーカーにも最先端CPUが広がっています。iPhoneだけでなく、他の大手スマホメーカーも5ナノ×5Gで販売を拡大しようと考えるのは明らかであり、5ナノラインも生産予約が多くなっていると思われます。
グラフ2を見ると、TSMCの7ナノラインの売上高が順調に伸びていることがわかります。
このため、2020年もTSMCの設備投資は増加すると予想されます。5Gスマホの需要とスマホメーカーの販売意欲が強いため、最先端ロジック半導体への投資は当面増え続ける可能性があります。これは、アドバンテスト、東京エレクトロン、レーザーテック、SCREENホールディングス、ディスコの5社の業績と株価にプラスになると思われます。特にロジック半導体向けが多いレーザーテック、アドバンテストにとっては、5ナノ、3ナノと最先端ロジック半導体への投資が続く場合は、上下の振れが小さい状態で業績が右肩上がりになる可能性があり(特にレーザーテック)、より大きな投資パフォーマンスを得ることができる可能性があります。
5Gスマホの実需が強い状態が長続きし、ミリ波帯の用途開拓も進むならば、3ナノの次の2ナノ、1.5ナノ、1ナノへの設備投資が採算が取れるようになると思われます。2ナノ~1ナノはASMLが現在開発中の次世代型EUV露光装置が完成すれば、実現できる可能性が出てきます。半導体設備投資のブーム、特に最先端ロジック半導体の設備投資の増加は、多少の波はあると思われますが、5Gをけん引役として長期化する可能性があります。
グラフ2 TSMCのテクノロジー別売上高