12月に注目したい新興株の動き

 毎回ネガティブな展望ばかり書いている気がしますが、先月の本コラムでは「月後半辺りからの地合い改善に期待」と書きました。自画自賛はイタいですが、ビンゴでしたね(痛)。決算発表シーズン通過、IPO空白期間というタイミング的な要因が大きかったといえそうです。決算発表は四半期(3カ月)に1回あります。次回は来年2月前半が要警戒、それを通過すればまた上向く、このサイクルをやるんじゃないでしょうか(あくまで外部環境面でのリスクオフなネタがなければ)。

 マザーズ指数が上向き、売買も増加傾向で、直近IPOの一角で急騰する銘柄も出てきています。この雰囲気から、普段マザーズを見てない市場関係者が「これからマザーズが良くなりそう!」「出遅れ修正に期待!」「年末ラリーに期待!」なる声を挙げ始めています。この論調を後押しするデータも出てきました。マザーズの地合いが好転した11月第3週(18日~22日)。この週でいえば、外国人投資家がマザーズ市場で「167億円の買い越し」でした。この金額は、今年では最大の買い越し額です。「外国人も出遅れてたマザーズ銘柄を買い始めた!」と言う根拠となりそうです。

 市場は投資家のセンチメントが一番大事ですので、そうしたセンチメントが生まれたことは前向きに捉えたいものの…うのみにしないほうがいいと思います。12月はIPOラッシュで、そっちに短期勢の資金が向かいます。これが上昇した11月後半との違い。また、たしかに11月第3週こそ外国人は大幅買い越しでしたが、この投資家はアテになりません。外国人のマザーズにおける年間売買動向を集計すると、2013年が+37億円、2014年が▲1,337億円、2015年が+62億円、2016年が▲644億円、2017年が▲711億円、2018年が▲930億円、2019年(11月第3週まで)が▲285億円。外国人がマザーズ株をたくさん買い、そして保有するというのは幻想です。

 海外の長期投資家(年金マネーなど)が、日本のマザーズ銘柄を長期運用で買うとも思えず、となると11月第3週の買い越し分は短期のヘッジファンド勢が中心と見るべきでしょう(近いうちに売り手に回る)。また、新興株は年末ラリーが起きるというイメージが浸透していますが、実際はそうでもありません。アベノミクス以降の12月のマザーズ指数は、月間騰落率平均で▲1.3%。昨年の12月に関しては、月間で▲19.7%と悲惨でした(昨年はソフトバンクIPOという需給悪化要因もありました)。

 12月は何を警戒すべきか? と言いますと、毎年のことになりますが「個人投資家の売り」です。アベノミクス以降の12月は、東証1部もマザーズも個人投資家は月間で全て売り越しています。大暴落した昨年の12月でさえ、“逆張り”派のはずの個人投資家は売り越しでした。なぜ売るのか?

 その動機は、節税目的の「損出し」と見られます。手持ちに含み損の状態で持っている銘柄がある場合、このタイミングで実現損を計上すれば、利益を圧縮できます。“節税対策”というやつですね。では、何を売るか? となれば、現時点で今年の高値から大幅に値下がりしている塩漬け銘柄と考えられます。今年の新興株でいえば、MTG(7806)や、サンバイオ(4592)、Kudan(4425)、HEROZ(4382)、メルカリ(4385)など。指数ウエイトの高い銘柄も多く、こうした銘柄の年内最終処分がマザーズ指数の押し下げ要因になることを想定しておくべきでしょう。

 ただし、年内受渡し最終日(今年は26日)を通過すると、このストレスから解放されます。さらにIPOも空白期間に入ります。これで上向いて、年明け1月は良くなり、そして2月の決算発表シーズン接近で崩れる…これって昨年と一緒じゃん、的な!?