11月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

 9月、10月と2カ月連続「月間で1,000円以上の上昇幅」となっていた日経平均株価でしたが、11月も勢いは弱まりながらも月間では上昇。連日、米中貿易協議に関するヘッドラインに一喜一憂しつつも、すう勢としては「米中貿易協議がフェーズ1合意でまとまりそう」への期待感が優勢でした。

 米国株も日本株も指数は強い…ここは不変でしたが、物色の中身は月前半に大きく変化。米長期金利の上昇をトリガーに、日米同時に債券が売られ、債券に近い存在として重宝されていたJ―REITが大きく崩れる場面もありました。東証REIT指数は11月の月間騰落率が▲1.1%で、月間ベースでは7カ月ぶりの下落に。

 このタイミングでは、銀行株や自動車株、商社株などバリュー株が買われていました。大掛かりなアセットアロケーション(ポジションを大きくし過ぎていたものを売り、ポジションを小さくし過ぎていたものを買う)が起きたのが月前半。この辺は機関投資家の話ですので、日本のマザーズ銘柄なんかは蚊帳の外です。決算発表集中日である11月14日に向け、マザーズ指数も安値を切り下げます。

 そんなマザーズ市場がひさびさに復活したのが、決算発表集中日の翌日(15日)からでした。14日分の決算プレーが一巡すると、15日に月間安値845.22ポイントを付けたあとは一直線に上昇。18日から月末29日まで、日ベースでマザーズ指数が下落したのもわずか1営業日でした(しかも下落した21日も▲0.1%)。

 決算発表という“鬼門”を通過したほか、21日上場の247(7074)以降およそ1カ月IPOが空白期間に入ることも追い風に(指数に含まれない直近IPOも活況)。26日には、マザーズ上場銘柄の新安値銘柄が「ゼロ」という5カ月ぶりとなる現象も発生しました。11月の月間騰落率は、日経平均+1.6%に対して、日経ジャスダック平均+4.4%、マザーズ指数+4.7%。マザーズだって、やればできる! な1カ月でした。

11月の売買代金ランキング(人気株)

 11月の売買代金トップも、10月に続いてジャスダックのワークマン。売買代金25日移動平均値では前月の98.5億円から73.4億円に減少しましたが、その中で月間17.7%と株価は再浮上しました。10月に急落する場面のあったワークマンですが、11月の切返しぶりを見ると、押し目買い需要は相当強い銘柄のようです。ちなみに、日経トレンディが選んだ「2019年ヒット商品30」ではワークマンが1位でした(2位がタピオカ、3位がPayPay)。新興株市場における2019年のヒット銘柄でもワークマンが1位でしょうね。

 月間で指数が上昇した11月は、東証マザーズ市場の流動性も改善。マザーズ市場の11月の1日当たり売買代金は708億円と、10月の616億円比で15%アップでした。空売りや先物売りなど仮需の売りが少ないマザーズ市場。基本的に多くの投資家が「買い」からエントリーしますので、上がるための必須条件は「個人投資家の売買が増加すること」になります。そうした意味でも、一定の成果が残った11月だったといえそうです。

市場 コード 銘柄名 11月末
終値
時価総額
(億円)
売買代金25日
移動平均値
(億円)
月間
騰落率(%)
ジャスダック 7564 ワークマン 9,060 7,415 73.4 17.7%
東証マザーズ 4385 メルカリ 2,414 3,699 41.2 -1.5%
東証マザーズ 4565 そーせい 2,289 1,763 38.9 -10.1%
東証マザーズ 4592 サンバイオ 4,305 2,229 23.5 -2.4%
東証マザーズ 4563 アンジェス 710 759 21.1 0.3%
東証マザーズ 6166 中村超硬 801 68 20.3 -39.8%
東証マザーズ 6096 レアジョブ 5,740 271 15.0 124.0%
ジャスダック 8704 トレイダーズ 109 159 13.5 60.3%
ジャスダック 3758 アエリア 915 216 12.9 -10.5%
ジャスダック 6324 ハーモニック 4,755 4,580 12.7 -6.0%
ジャスダック 6629 テクノHR 805 170 12.6 79.3%
東証マザーズ 4477 BASE 1,896 387 11.9 53.5%
東証マザーズ 7803 ブシロード 4,000 643 11.5 -0.9%
東証マザーズ 6195 ホープ 8,410 117 11.1 91.1%
東証マザーズ 6067 インパクト 2,750 165 10.9 62.1%
ジャスダック 6256 ニューフレア 11,880 1,360 10.5 47.2%
東証マザーズ 6182 ロゼッタ 4,050 418 10.1 11.3%
ジャスダック 2702 マクドナルド 5,410 7,193 9.9 -0.4%
東証マザーズ 4443 Sansan 5,720 1,777 9.8 47.8%
東証マザーズ 3990 UUUM 5,460 1,060 9.4 11.8%

売買代金ランキング(5銘柄)

1 ワークマン(7564・ジャスダック)

 再度マクドナルドを抜き、時価総額でも新興市場トップとなったワークマン。最も注目されるのが、毎月月初に発表する月次動向。10月の既存店売上高も+23.8%と、9月分(+16.1%)を上回る強い伸び率を記録したことが好感されました。通常の小売株ですと天候不順は大敵ですが、ワークマンは真逆。降雨日や降雨量が多かった10月に、レインウエアや長靴などの雨関連商品が好調だった、という具合です。

 また、月後半の上昇加速に寄与したのが、22日付のいちよしの目標株価引き上げでした。投資判断を最上位の「A」に引き上げたうえ、目標株価を従来の3,350円から1万1,000円に大幅アップ(前回比3倍以上!)。高機能・低価格なプライベートブランドの開発強化で、既存店売上高は高い伸びが続くと予想しているようです。

2 レアジョブ(6096・東証マザーズ)

 14日に今期の業績予想を営業利益で3億円から4億円に引き上げたほか、12月5日時点の株主に1対2の株式分割を実施すると発表しました。主力の英語のオンライン教育が個人向け、法人・教育機関向けとも好調。上期の営業利益は前年同期比で約10倍と、期初計画を上回るペースで推移したようです。

 また、同時に発表した株式分割も、東証1部への昇格準備と想像しています。マザーズ銘柄の大半が値下がり要因イベントになる決算発表ですが、今回の決算シーズンで最も評価を高めた銘柄がレアジョブだったといえそうです。

3 トレイダーズ(8704・ジャスダック)

 2年前の夏に、一度大相場を作った低位株。株価60円台から急動意し、(低位株のため値幅取り妙味は大きいとはいえ)異様に活況化した11月でした。きっかけは、14日発表の決算発表。中間期は営業収益が前年同期の2倍となり、営業利益も13.2億円の黒字に転換(前年同期は2.7億円の赤字)。子会社のトレイダーズ証券のトレーディング収益が想定以上だったようです、これを踏まえて通期の業績予想も上方修正しています。

4 ハーモニック(6324・ジャスダック)

 わかりやすい“決算が悪い株”ですが、8日に年初来高値を更新するなど“株価は強い株”。12日に、慎重に見えた期初計画(営業損益10億円黒字予想)すら、一転して15億円の営業赤字予想に下方修正。受注回復も遅れ、足元のロボット需要や生産の厳しいことを示しました。

 ただ、急落して始まった翌13日も、ほぼ寄付きを底に急激に下げ幅を縮小。わかりやすい決算悪い株にはわかりやすく空売りもたまっていて、その売り分の買戻しを誘発するような短期勢の買いが入っているのではないでしょうか。いまだに年初来で6割近く上昇している理由が判然としないハーモニック株…一部外資系証券でも、株価の割高感は強いとして投資判断「アンダーウエート(最下位)」を継続していました(だから空売りがたまるのか…)。

5 Sansan(4443・東証マザーズ)

 今年6月に上場した直近IPO銘柄。7月に上場来高値6,260円を付けたのをピークに、10月安値3,540円まで下げっ放しでしたが…11月に月間47.8%上昇と、上場来で最も輝いた1カ月になりました。その理由は、“伝家の宝刀”主幹事による強気レポートでした(主幹事証券が出すことが多い「新規カバレッジで“強気”」のレポートは、上場以降で1度しか出せないため)。

 公開価格4,500円と、上場初日の初値4,760円という、持っている投資家が多そうな価格帯でもみ合っていたところで、野村証券が投資判断「Buy」、目標株価6,950円で新規カバレッジ開始。26日付の同レポートを受けた翌27日、上向いていたマザーズの地合いも手伝ってかストップ高に! 高い売上高成長率を維持しているが、今後は利益率の上昇も見込めると。

11月の株価値上がり率ランキング

 11月は物色の質の面でかなりの改善が見られました。前月10月はランクイン20銘柄のうち、15銘柄が時価総額100億円未満の小型株。上がった銘柄の顔ぶれも、仕手系の材料株ばかりでした。それが11月は、時価総額100億円未満の銘柄が20銘柄中9銘柄にとどまっています。しかも、顔ぶれを見る限りは「好決算銘柄が目立つ」という特徴が挙げられそうです。

 新興株市場全体の地合いが好転するなかで、幅広い銘柄に短期資金が流れたといえるでしょう。値上がり率上位20銘柄の全ての月間上昇率が50%を超えたのは、今年2月以来のこと。「買う→利益確定売り→買う→利益確定売り→買う…」の短期的な資金回転が効いた投資家を生んだ久々の好地合いでした。

市場 コード 銘柄名 月間騰落率(%) 11月末
終値
前月末
終値価格
時価総額
(億円)
ジャスダック 6239 ナガオカ 165.1% 2,012 759 71
東証マザーズ 6096 レアジョブ 124.0% 5,740 2,562 271
ジャスダック 9625 セレスポ 106.3% 2,746 1,331 78
ジャスダック 6840 AKIBA 103.8% 6,930 3,400 64
東証マザーズ 6195 ホープ 91.1% 8,410 4,400 117
ジャスダック 6629 テクノHR 79.3% 805 449 170
ジャスダック 4690 日パレット 76.9% 3,450 1,950 29
ジャスダック 4356 応用技術 70.6% 4,520 2,650 129
東証マザーズ 1431 リブワーク 67.0% 4,860 2,910 132
東証マザーズ 6067 インパクト 62.1% 2,750 1,696 165
ジャスダック 8704 トレイダーズ 60.3% 109 68 159
ジャスダック 1724 シンクレイヤ 59.4% 1,650 1,035 67
ジャスダック 3910 エムケイシステム 58.2% 1,395 882 76
東証マザーズ 4435 カオナビ 55.0% 8,310 5,360 450
ジャスダック 3933 チエル 54.9% 1,650 1,065 64
東証マザーズ 4477 BASE 53.5% 1,896 1,235 387
ジャスダック 7748 ホロン 53.4% 5,240 3,415 175
東証マザーズ 4424 Amazia 52.4% 6,280 4,120 208
ジャスダック 6838 多摩川HD 52.3% 2,114 1,388 97
東証マザーズ 6092 エンバイオHD 50.4% 1,373 913 90

値上がり率ランキング(5銘柄)

1 ナガオカ(6239・ジャスダック)

 8日の大口受注のリリースを手掛かりに、3日連続ストップ高へ。プラスチックの原料プロピレンの需要増加で、世界各地でプロピレン・プラントへの設備投資が活発化。プラント建設に際して、同社の「スクリーン・インターナル」が6.4億円の大口受注を獲得したようです。これ以外にも14日も5.3億円の大口受注獲得を発表。今期の業績予想を大幅に増額しており、市場の評価は一変しました。

 そもそも知名度が低いジャスダック銘柄で、流動性も低く、強材料による株価インパクトは絶大。25日には自社株買いの実施まで発表しています。2015年に上場した際に付けた初値が2250円。その後は上場来安値で441円までありましたが、11月の上昇一発で4年分の下げをほぼ取り返した格好に。

2 セレスポ(9625・ジャスダック)

 1994年の上場来で最も上がった1カ月に。きっかけは、今中間期の好決算発表でした。11日発表した今中間期は、国際的スポーツ大会の受注があり、売上高が前年同期比53.5%増、営業利益は同20倍。通期予想は据え置いていますが、営業利益は通期予想の6億円を上期分(7.3億円)で超過しています。上期ができ過ぎた面がありそうですが、通期予想の上方修正は濃厚だろうとの読み筋から株価も2倍に。

3 テクノホライゾン(6629・ジャスダック)

 セレスポ同様、今中間期の好決算を受け、業績上方修正期待による先回り買いで急騰した銘柄。発表タイミングは10月末で、翌1日にストップ高。今中間期は、売上高が前年同期比で32.4%増、営業利益は同2.6倍でした。通期の営業利益予想12億円は据え置かれていますが、上期時点で進捗率は66%に到達しています。通期予想の上方修正期待が先行したわけです。

 業績好調の背景に、事業譲受で新たに開始した電子黒板事業の存在がありました。国策的に教育ICT化を進めようとしていますので、長期的にも恩恵を受けるのかもしれません。

4 日本パレットプール(4690・ジャスダック)

 4日に発表した今期予想の大幅上方修正が急騰のトリガーに。主力のパレットのレンタル稼働率が高まったことなどを受け、今期の営業利益を従来予想の2.0億円から3.6億円に大幅増額。業績数字のサプライズもありましたが、それ以上に「同業他社の存在」も挙げられます。

 今年6月に東証2部に上場したユーピーアールが、上場後に驚異的な上げ方をしました。同じパレットレンタルを主力事業とする企業。ユーピーアールが予想PER20倍台で取引されているのに対して、日本パレットはいまだに予想PER9倍台。ユーピーアールに引っ張られる格好で、割負けしている分を一部修正する動きになったと思われます。

5 インパクト(6067・東証マザーズ)

 月末に急騰、きっかけは25日にインドで配信された記事だったようです。インドの一部経済紙によると、急成長している宿泊施設チェーンのOYOと英国のプライベート・エクイティ企業が共同でインドのコーヒーチェーン「Cafe Coffee Day」の買収に名乗りを挙げたと。インパクトは、「Cafe Coffee Day」を展開するインド企業と合弁会社を設立しています。インド企業創業者の死去による先行き懸念で株価が急落していただけに、思惑によるリバウンドも強烈に…。

12月に注目したい新興株の動き

 毎回ネガティブな展望ばかり書いている気がしますが、先月の本コラムでは「月後半辺りからの地合い改善に期待」と書きました。自画自賛はイタいですが、ビンゴでしたね(痛)。決算発表シーズン通過、IPO空白期間というタイミング的な要因が大きかったといえそうです。決算発表は四半期(3カ月)に1回あります。次回は来年2月前半が要警戒、それを通過すればまた上向く、このサイクルをやるんじゃないでしょうか(あくまで外部環境面でのリスクオフなネタがなければ)。

 マザーズ指数が上向き、売買も増加傾向で、直近IPOの一角で急騰する銘柄も出てきています。この雰囲気から、普段マザーズを見てない市場関係者が「これからマザーズが良くなりそう!」「出遅れ修正に期待!」「年末ラリーに期待!」なる声を挙げ始めています。この論調を後押しするデータも出てきました。マザーズの地合いが好転した11月第3週(18日~22日)。この週でいえば、外国人投資家がマザーズ市場で「167億円の買い越し」でした。この金額は、今年では最大の買い越し額です。「外国人も出遅れてたマザーズ銘柄を買い始めた!」と言う根拠となりそうです。

 市場は投資家のセンチメントが一番大事ですので、そうしたセンチメントが生まれたことは前向きに捉えたいものの…うのみにしないほうがいいと思います。12月はIPOラッシュで、そっちに短期勢の資金が向かいます。これが上昇した11月後半との違い。また、たしかに11月第3週こそ外国人は大幅買い越しでしたが、この投資家はアテになりません。外国人のマザーズにおける年間売買動向を集計すると、2013年が+37億円、2014年が▲1,337億円、2015年が+62億円、2016年が▲644億円、2017年が▲711億円、2018年が▲930億円、2019年(11月第3週まで)が▲285億円。外国人がマザーズ株をたくさん買い、そして保有するというのは幻想です。

 海外の長期投資家(年金マネーなど)が、日本のマザーズ銘柄を長期運用で買うとも思えず、となると11月第3週の買い越し分は短期のヘッジファンド勢が中心と見るべきでしょう(近いうちに売り手に回る)。また、新興株は年末ラリーが起きるというイメージが浸透していますが、実際はそうでもありません。アベノミクス以降の12月のマザーズ指数は、月間騰落率平均で▲1.3%。昨年の12月に関しては、月間で▲19.7%と悲惨でした(昨年はソフトバンクIPOという需給悪化要因もありました)。

 12月は何を警戒すべきか? と言いますと、毎年のことになりますが「個人投資家の売り」です。アベノミクス以降の12月は、東証1部もマザーズも個人投資家は月間で全て売り越しています。大暴落した昨年の12月でさえ、“逆張り”派のはずの個人投資家は売り越しでした。なぜ売るのか?

 その動機は、節税目的の「損出し」と見られます。手持ちに含み損の状態で持っている銘柄がある場合、このタイミングで実現損を計上すれば、利益を圧縮できます。“節税対策”というやつですね。では、何を売るか? となれば、現時点で今年の高値から大幅に値下がりしている塩漬け銘柄と考えられます。今年の新興株でいえば、MTG(7806)や、サンバイオ(4592)、Kudan(4425)、HEROZ(4382)、メルカリ(4385)など。指数ウエイトの高い銘柄も多く、こうした銘柄の年内最終処分がマザーズ指数の押し下げ要因になることを想定しておくべきでしょう。

 ただし、年内受渡し最終日(今年は26日)を通過すると、このストレスから解放されます。さらにIPOも空白期間に入ります。これで上向いて、年明け1月は良くなり、そして2月の決算発表シーズン接近で崩れる…これって昨年と一緒じゃん、的な!?