米中の貿易交渉、景況感をフォローする

 このうち、(1)の米中通商交渉については、まず米国による対中関税引き上げ期限12月15日に向けて、市場は神経質になりそうです。

 ただし、トランプ米大統領は2020年11月の大統領選挙での再選を目指して、中国との合意演出に前向きと見られます。同大統領は香港人権・民主化法案に署名をした一方で、中国政府への配慮を見せ、中国の報復措置は控えめなものでした。このため、早晩、部分合意がなされるとの基本観を変える必要はないと判断しています。リスクは、米政権側が選挙対策として最善の合意タイミングを計るうちに、中国側の不興が高じて、交渉がまとまらなくなる政治的事故の類いと考えています。

(2)、および(4)の米中景況については、新たな経済データが発表されています。

 図1の製造業PMI(購買担当者指数)は、中国が景気分岐点とされる50%を回復した一方、米国が予想外に40%台後半で、もたついています。欧州は40%台半ばと一番深く落ち込んでいますが、底入れの兆しも、ちらほら観察されます。米中摩擦の緩和に加え、5G(第5世代移動通信システム)普及に向けた半導体サイクルの改善が見込まれる2020年には、製造業景況感がしばし底堅そうとの想定は維持して良いでしょう。ただし、要の米景況感の回復がまだ不調であり、リスク・シナリオとして、しばらく目が離せない場面が続きます。

図1:米欧日中の製造業景況感

出所:Bloomberg Finance L.P.