足元、金相場が軟調なのは、株高により代替資産としての投資妙味が低下しているため

 その金相場ですが、先週、超短期的には反落しました。以下のグラフは、主要な株式、通貨、商品、暗号資産の先週1週間の騰落率を示しています。

図:ジャンル横断・騰落率 11月4日(月)から11月8日(金)まで

※楽天証券のマーケットスピードⅡより楽天証券作成(ビットコインを除く)
※ビットコインはCME(シカゴマーカンタイル取引所)の先物(期近)価格
※プラチナはCME(シカゴマーカンタイル取引所)の先物(中心限月)価格
※騰落率は、当該週の週足の始値と終値を参照して算出。
(終値-始値)/始値

 金(ゴールド)は、平時より比較的変動幅の大きいビットコイン[暗号]に次ぐ、変動率となりました。また、金と同じ貴金属の銀は、ドル建て価格で18ドルの節目を割れたタイミングで売りが膨らみ、下落が加速しました。銀の下落の発端となったのが、貴金属銘柄で最も取引量が多く、貴金属銘柄の値動きを先導する傾向がある金の下落だったと考えられます。

 一方、米中貿易戦争において、中国側が米国と引き上げ合戦を行ってきた関税について、段階的に撤廃することで、米国側と合意したと報道がありました。この件についてはまだまだ不透明な点がありますが、それでも、世界規模の懸案事項である米中貿易戦争が、鎮静化に向かう期待が高まりました。

 米中貿易戦争の鎮静化期待がもたらしたのは、リスクをとって積極的に運用を行う“リスクオン”のムードでした。このリスクオンの高まりにより、各種主要株価指数、そして景気動向に連動する場面が散見される原油や銅などのコモディティの上昇が目立ちました。先週の金の下落は、リスクオン時、株式などの保有妙味が増し、相対的に金の保有妙味が低下したことによると考えられます。

 価格変動を短期的に注目するのか、長期的に注目するのか、値動きをどの時間軸で見るかで、注目する材料、材料の解釈の仕方が異なります。

 金相場においては短期的にはリスクオンで下落したものの、長期的には、以下図のように、複数の上昇要因があるため、下落は限定的で下落の要因となった株価の上昇が一服すれば、金相場は反発に転じると考えられます。

図:金相場堅調を長期的に支える諸要因

 

出所:筆者作成