サッカー・ラグビーの世界杯の優勝トロフィーを比較する
「南ア勝利!ラグビー世界杯のトロフィーはなぜ金色なのか!?」で、ラグビーの世界杯の優勝トロフィーの物質的価値について筆者の推計を述べました。
今回は、ラグビー世界杯の優勝トロフィーと、東京五輪の金メダルと、サッカー世界杯の優勝トロフィーを比較します。
以下の図は、3つの高さと重さを比較したものです。
図:3つの贈呈品の比較
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各種資料をもとに優勝トロフィーを比較すると、高さはラグビー世界杯の優勝トロフィーのほうが高く、重さはサッカー世界杯の優勝トロフィーの方が重いことが分かります。一見すると、ラグビー世界杯の優勝トロフィーの方が、サッカー世界杯の優勝トロフィーよりも大きいため、重いように見えますが、実際はその逆です。
ラグビー世界杯の決勝戦(11月2日)以降、優勝した南アフリカの選手たちが、ウェブ・エリス・カップ(優勝トロフィーの名前:由来は前回のレポートをご参照ください)の上部のフタを外し、カップ内部のくぼみにシャンパンを注ぎ入れ、選手たちが豪快に飲みまわしているシーンが、世界杯の公式ホームページに掲載されました。
この動画は、ラグビー世界杯の優勝トロフィーに空洞があることを示しています。また、前回のレポートでも触れましたが、脱着式になっている台座と本体の結合部分の本体側も、ある程度空洞があると推定されます。見た目と重さにギャップがあるのは、ラグビー世界杯の優勝トロフィーに空洞があることが一因であると考えられます。
しかし、見た目と重さのギャップの最も大きな要因は、トロフィーを構成する貴金属の含有量にあります。以下の表は、3つの贈呈物に含まれる貴金属ごとの含有量を示したものです。
図:3つの贈呈物に含まれる貴金属ごとの含有量(一部、筆者推定)
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室温程度の環境における金の密度は19.32 g/cm3、銀は10.49 g/cm3です(金の密度は銀のおよそ1.8倍)。つまり、空洞があり、かつ金に比べて密度が低い銀がメインのラグビー世界杯の優勝トロフィーは、金がメインのサッカー世界杯の優勝トロフィーに比べて軽いのです。
また、これらの物質的価値ですが、金を1グラムあたり5,700円、銀を1グラムあたり69.0円で計算すると、金がメインのサッカー世界杯の優勝トロフィーが圧倒的に高額であると推計されます。
図:3つの贈呈物の物質的価値(一部、筆者推定)
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出所:各種資料および各種資料をもとにした筆者推定
五輪(夏季・冬季)、サッカー世界杯、ラグビー世界杯はいずれも4年おきに行われます。次の大会は、夏季五輪が2020年に東京で、冬季五輪が2022年に北京。冬季五輪と同じ年に行われるサッカー世界杯がカタールで、ラグビー世界杯が2023年にフランスで行われる予定です。
4年に1回のこれらの大会がない年(…2017、2021、2025年など)は、優勝者への各種贈呈物が世間の目に触れる機会は減るものの、それ以外の年は金メダルか優勝トロフィーを目にすることになります。
貴金属の相場は絶えず変動しているため、その時の相場によって物質的価値は変動しますが、前回述べた通り、優勝者への贈呈物が金色である限り、“金には価値がある”という世界規模の共同幻想が存在し、その共同幻想が超長期的に金相場を支え続けると筆者は考えています。
足元、金相場が軟調なのは、株高により代替資産としての投資妙味が低下しているため
その金相場ですが、先週、超短期的には反落しました。以下のグラフは、主要な株式、通貨、商品、暗号資産の先週1週間の騰落率を示しています。
図:ジャンル横断・騰落率 11月4日(月)から11月8日(金)まで
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※ビットコインはCME(シカゴマーカンタイル取引所)の先物(期近)価格
※プラチナはCME(シカゴマーカンタイル取引所)の先物(中心限月)価格
※騰落率は、当該週の週足の始値と終値を参照して算出。
(終値-始値)/始値
金(ゴールド)は、平時より比較的変動幅の大きいビットコイン[暗号]に次ぐ、変動率となりました。また、金と同じ貴金属の銀は、ドル建て価格で18ドルの節目を割れたタイミングで売りが膨らみ、下落が加速しました。銀の下落の発端となったのが、貴金属銘柄で最も取引量が多く、貴金属銘柄の値動きを先導する傾向がある金の下落だったと考えられます。
一方、米中貿易戦争において、中国側が米国と引き上げ合戦を行ってきた関税について、段階的に撤廃することで、米国側と合意したと報道がありました。この件についてはまだまだ不透明な点がありますが、それでも、世界規模の懸案事項である米中貿易戦争が、鎮静化に向かう期待が高まりました。
米中貿易戦争の鎮静化期待がもたらしたのは、リスクをとって積極的に運用を行う“リスクオン”のムードでした。このリスクオンの高まりにより、各種主要株価指数、そして景気動向に連動する場面が散見される原油や銅などのコモディティの上昇が目立ちました。先週の金の下落は、リスクオン時、株式などの保有妙味が増し、相対的に金の保有妙味が低下したことによると考えられます。
価格変動を短期的に注目するのか、長期的に注目するのか、値動きをどの時間軸で見るかで、注目する材料、材料の解釈の仕方が異なります。
金相場においては短期的にはリスクオンで下落したものの、長期的には、以下図のように、複数の上昇要因があるため、下落は限定的で下落の要因となった株価の上昇が一服すれば、金相場は反発に転じると考えられます。
図:金相場堅調を長期的に支える諸要因
NY金先物価格は短期的には1,400ドルと1,500ドルのレンジ相場か?
短期的に反落しているものの、長期的には、国内外ともに引き続き、金価格は記録的な高値水準にあります。ニューヨーク金先物(NY金)価格はおよそ6年半ぶり、国内金小売参考価格はおよそ40年ぶりの水準です。
図:国内外の金価格の推移 (1975年1月~2019年11月11日まで)
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短期的に、NY金は以下のように8月後半をピークに反落気味ですが、6月半ばから8月半ばに一時的にもみ合った、1,400ドルから1,450ドルあたりの水準で下げ止まると考えています。
図:NY金先物価格の推移(期近、週足、終値)
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6月半ばから8月半ばは、10年7カ月ぶりに実施された米国の利下げが大きな話題になったタイミングでした。先述の図「金相場堅調を長期的に支える諸要因」の代替通貨や世界的な通貨安競争という要因で金が買われたと考えられます。
現在の金相場は、短期的には米国の金融政策の動向に強く影響される可能性があります。短期的には利下げが行われる可能性がある、あるいは実際に今後も利下げが行われる、などの米国の金融政策に関わる材料が、目先、金相場を反発させる材料になると考えています。
12月に、今年3回目の利下げ実施が予想されている中、12月10、11日のFOMC(連邦公開市場委員会)に向けて、金相場の下値は限定的で利下げを期待するムードが高まれば高まるほど、反発色を強める可能性があると考えています。
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