7:仕組み商品に投資して損をした

 日本の機関投資家は、デリバティブを組み入れた「仕組み商品」(主に仕組み債)に対して、最初は最先端の金融技術を使った儲かる商品だと勘違いし、次には決算をごまかすために、大いにこれを利用して、主に外資系の証券会社に多大な利益を提供した。

 デリバティブがプライシングされる原理を理解すれば、これが「儲かる金融商品」であるはずはないのだが、目新しいものがいいものだと思う人は少なくない。

 金融の新しいテクノロジーは、大手の顧客が使い古すと、段階を追って小口の顧客に向けた商品に使い回されることが多い。

 現在、デリバティブを使った仕組み商品は、個人投資家をターゲットにするところまで降りてきた。EB(他社株転換権付債券)やその他の仕組み債券・預金のような、プライシングが計算できる投資家は決して買わない金融商品が無知な個人投資家に向けて広く売られているのが残念ながら日本の現状だ。

【追記】

 8年前の原稿だが、あらためて読んでみると、我が原稿ながら参考になる。

 日本では、機関投資家の失敗を、個人投資家が几帳面なまでに見事に後追いしていることは驚異的だ。7つの失敗に対応する個人の失敗は、(1)目標利回りから資産配分する個人向けのソフト、(2)毎月分配型などのインカム指向商品、(3)売らなければ損でないという意地、(4)外貨建ての生命保険、(5)iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)などで選ぶバランスファンド、(6)手数料の高いアクティブ投信、(7)個人向けの仕組み債、と枚挙にいとまがない。

 機関投資家と個人投資家が時間差で同じ失敗をすることには2つの理由が考えられる。いずれも「人間」が意思決定し行動するからという、言わば行動経済学的原因と、機関投資家をカモにできたビジネスを行った者が、相手が進化して上手くいかなくなると、よりリテラシーの低い対象を目指すからというビジネス上の理由だ。後者の典型例は個人向けの仕組み債だが、これなどは全く悪質であり、醜悪なビジネスだ。

 いずれの理由であるとしても、7つの間違いをよく理解して、自分で考える習慣を持つなら、個人が回避できるはずの失敗だ。参考にしていただきたい。(2019年11月11日 山崎元)