4:外債の期待リターンを過大に評価した
典型的には、1980年代後半の生命保険会社だが、高金利の通貨の債券や預金は円ベースでも期待リターンが高いと誤解して安易に外債投資を拡大して、プラザ合意後の円高で大損した。
当時の生保の認識は次のようなものだった。外債投資のリスクとリターンについては「外債は金利が高く期待リターンは高いが、為替リスクがある。しかし、当社はリスクを取る体力があるので、高いリターンを狙うことができる」、為替に関する相場観としては「日米の国力の差を考えると、1ドル=200円台の為替レートが100円になることなどあり得ない」といったものだった。
相場観を事後的に批判するのは、相場に携わるものとしては禁じ手だから、本稿では触れないが、当時の大手生保のリスクとリターンに対する認識に注目すると、「高金利=円ベースでも高い期待リターン」と考えたのは間違いだった。
外債投資のリターンは、事後的には円債のリターンよりも高くも低くもなり得るが、期待値ベースで一方に偏りがあるとすると、市場で、為替レートや金利がそれを打ち消す方向に変化するはずだ。従って、市場で成立している為替レートと金利を前提とすると、どの通貨・金利のリターンが相対的に高いと断定することはできない。
しかし、一般的な(あえていえば、「素人の」)心理として、高金利の通貨・債券は円ベースでも期待リターンが高いと信じがちだし、だからこそ、個人投資家の間に、外債や外債ファンドに多くの買い手がいるのだろう。
当時の大手生保は、1社で数兆円規模の含み益を抱えていたので、当時、運用でリスクを取ることができるという判断自体は間違っていなかったが、その含み益も外債投資の大損やその後の株安であらかた吹き飛んでしまった。
過去を振り返ると、日本の生保は本当に運用が下手だった。彼らの歴史は投資家にとっての教訓に満ちている。