1:目標利回りにこだわって運用計画を作り、リスクを軽視した

 主に1990年代後半から2000年代前半にかけて、日本の企業年金は厳しい運用難を経験し、多くの年金基金が解散したり「代行返上」で運用資産を縮小させたりした。彼らの失敗の原因は、通常「5.5%」だが、年金制度を設計した時の想定運用利回り(予定利率)を「目標運用利回り」として、世間の金利水準が低下しているにもかかわらずそのままにして、これを達成するために母体企業の経営体力から見て過大なリスクを取って運用を行ったことだ。これが裏目に出て運用が破綻した。

 個人の資産運用でも、目標運用利回りを先に決めて、これを達成するためにという観点で運用計画を立てるようアドバイスするケースが少なくないが(FP[ファイナンシャル・プランナー]でも誤解しているケースが多い)、正しくは、リスクと期待リターンを同時に考慮して運用計画を決めるべきであり、簡便法でも、先にリスクの制限を決めて、その範囲の中で運用計画(特に資産配分計画)を立てるべきだ。

 公的年金の運用計画に関する議論などを見ていても、はじめに「目標運用利回り」ありきの思考がまだまだ残っているようなので、注意したい。