2:直利指向で運用して損をした
特に1980年代、1990年代の現象だが、日本の機関投資家は、投資元本に対するインカム・ゲインのみの利回りである「直利」の高い債券を好んで投資し、クーポンの高い債券を過大な値段(低い総合利回り)で購入した。この現象を「直利指向」と呼ぶが、直利指向は投資として合理的でもなかったし、これが修正される過程で、よく分かっている市場参加者(外資系のトレーダーなどが中心)に大いに儲けられてしまった。
直利指向の背景には、インカム・ゲインの利回りを評価する「ハーディー利回り」と呼ばれる利回りで生命保険会社が運用競争をしていたり、債券を時価評価せずに、インカム利回りだけを運用の成果として認識するような事業会社の余資運用があったりしたが、今日、個人投資家が「毎月分配型ファンド」や「通貨選択型ファンド」など、インカム利回りを意図的に高く設計した金融商品に「釣られている」のを見ると、インカム利回り指向は、日本人の国民性に共鳴するものがあるのかもしれない。
現実には、投資の利回りは、インカム・ゲインとキャピタル・ゲインを合わせて考えなければならないし、税引き前で同じ(総合)利回りなら、直利の高い債券の方が課税は大きくて損だといえる場合もあるので、注意が必要だ。