3:時価評価を嫌って損の認識が遅れた

 日本の企業経営者はおしなべて時価評価が嫌いだ。また、運用関係者も、時価評価を厳格に適用されることを嫌う傾向がある。加えて、過去にさかのぼるほど、運用は時価評価の適用範囲が小さかった。

 多くの機関投資家は、運用資産を簿価で評価して、実現利回りを調整する形で毎期毎期のつじつま合わせをしていたのだが、運用環境の厳しさもあって、含み損が膨らんで身動きがとれなくなった。

 かつて時価評価が十分適用されずに運用の意思決定を間違え続けてきたことに関して、これを会計制度のせいにする議論があるが、これは違う。会計制度がいかなるものであろうと、運用の現実を正確に把握すること、それを関係者(たとえば年金の加入者など)に隠さず正確に伝えることは必要だった。

 個人投資家にあっても、投資で損をしていても「売るまで負けと決まったわけではない」といった無駄な意地を張る人がいるが、現実を正しく認識し、自分の過去の買値に拘らずに現在の価格と環境に対してアクションを起こすことが運用の基本だ。