アイデアA:働いて稼ぐ繰り下げ増額プラン

 実際の法律改正まではまだ何年もかかりますが、この増額を生かす選択肢はいくつか考えられます。

 まず、一番簡単なのは65歳以降も「生活費にも困らないくらい収入がある」場合です。この場合は気にせず働き続けることで、「無年金」期間を遅らせても気にせず暮らしていけます。むしろ働いてがんばるほど、手元のお金の取り崩し開始も遅らせられますから、いいことずくめです。

 なお、国の年金の繰り下げは66歳まで1年はがんばらないと手続きができませんが、それ以降であれば月単位で好きな時期を受け取り時と定められます。70歳のつもりだったが、68歳で仕事を辞めたので年金受取開始でもいいのです。

 また、「増額した年金を受け取る」「通常の年金額で受け取り、過去の未受け取り分を現金で一括でもらう」という選択肢ができるので、マネープラン的にも自由度が増えます。

アイデアB:私的財産での「中継ぎ」による増額プラン

 65歳以降、仕事のほうはリタイアしても、あえて公的年金を受け取らないという選択も考えられます。日本年金学会では、これを「中継ぎ型(WPP)」と名付けた報告もあります。

 働く(W)、私的年金で継投(P:Private Pension)、公的年金(P:Public Pension)が野球のリリーフ継投策のようにつないでいくイメージです。

 この場合、あえて公的年金をもらわず、手元財産を計画的に切り崩しながら数年をやりくりします。無収入ですからこの間の課税負担はありませんし、社会保険料負担も軽くなります(継投の初年度だけ前年所得に応じて負担がある)。

「このくらい手元財産の残高が減ったら公的年金を受け取ろう」というボーダーラインを設定し、到達したら公的年金を受け始めるという考えです。

 この選択肢は「受け始める年齢は自分で決められる」ことと「遅らせるほど年金額は増える」ということを制度として活かしたアプローチです。かつ「終身で国の年金はもらえるため、長生きリスクに対する最高の対策となりうる」ことに最大のメリットがあります。

 ただ難点としては、心理的に手元の財産を切り崩して公的年金を無年金にするのは難しいことで、老後の資産管理がしっかりできている人向けとなります。