現在の年金制度は繰り上げ、繰り下げで、受取額が増減する

 現在、65歳を標準の受給開始年齢として、60~64歳の間に年金を受け始める「繰り上げ」と、65歳以降70歳までの間に年金を受け始める「繰り下げ」の制度があります。つまり「60~70歳」が年金受取開始の個人にとっての選択肢ということです。

 60~64歳の間に受け取る繰り上げを行うと年金額は減額、65歳以降70歳までの間繰り下げを行うと年金額は増額されます。繰り上げは年6%相当が減額され、繰り下げは年8.4%相当が増額されます。60歳から受け始める人はその人にとっての年金額の標準を100とすると70%まで減ります(30%減)。70歳まで年金を受け取らなかった場合、年金額は142まで(42%増)増額します。

 標準より早くもらった人は一見お得のようですが、少ない年金額で長い老後を過ごすことになるので、長生きをすればあまり得とは言えません。

 標準より遅くもらい始める人は、最初の数年間は無年金で過ごすことになりますが、その後は増額された年金をもらいますので、標準的な長生きであればトントン、それ以上長生きすればかなり得、ということになります。

 男女平均でいえば65歳の平均余命は22年くらいです。通常の100で22年もらえば2,200ポイントとした場合、70歳から17年受け取った場合は142×17=2,414、60歳から27年受け取った場合は、70×27年で1,890ポイントと、大きな差がつくことが分かります。

 もちろん自分の老後が何年あるかは分かりませんが、制度としてはこういう仕組みで、個人が選べるようになっています。