個人の資産運用とレバレッジ

 資産運用で、実質的に借金を利用して手持ちの資金以上のリスク・ポジションを持つことを「レバレッジ(を掛ける)」と呼ぶ。先物やオプションもこの仲間だし(実質的な借入が背後に存在する)、FX(外国為替証拠金取引)や商品先物取引、更にはETF(上場型投資信託)や公募の投資信託でもレバレッジを使ったものがある。

 短期のトレーディング目的でレバレッジを使った商品が利用されることがあるのは、読者もよくご存知だろうが、長期的な資産形成のための運用対象にレバレッジを使うことの是非はいかがなものだろうか。

 結論から言うと、(1)金融資産額が小さく、(2)人的資本が十分に大きい場合(典型的には「若くて健康で安定した職業に就いているが、貯金の少ない人」だろう)、レバレッジを利用した運用を行う事は、単に積立投資を行うよりも合理的な場合が十分あり得る。

 図2は、共に元本を積立て投資することは同じだが、「前半にリスク資産にレバレッジを掛けて運用して、資産額が十分大きくなってからはリスク資産の比率を落とす運用」と「100%リスク資産で運用する積立投資」との比較を考えてみたものだ。

(図2)前半レバレッジ運用と通常の積立投資

  どの程度レバレッジを掛けて、そのコストがいくらで、最終的なリスク資産投資比率をどうするかといった条件によって結果は異なるはずだが、傾向として以下のようなことが言えよう。

 (A)通常の積立投資では大きなリスク資産を持てない前半の時期に十分なリスク・エクスポージャーを持つ事ができ、この図には示されていないが、人的資本の価値が大きいので、その時期のリスクは問題になりにくいはずだ。

 (B)通常の積立投資の場合資産額が少ない1、2の時点のリターンは影響が小さく、資産額が増える終盤のT−1、Tといった時点のリターンの影響は非常に大きい。一方、前半にレバレッジを使う運用では、リスク資産の額が時間に対して均されるので、それぞれの時点のリターンの違いの影響がより良く分散されると期待できよう。